高知大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座 河野崇 教授

◆高知大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座 河野崇 教授
「今のところ、高知県では『無痛分娩が実施できていない』というのが、問題です」

日本産婦人科医会がまとめたデータをみてみると、現在=2025年3月末時点では、高知県と岩手県の2県で「無痛分娩」が実施されていません。ただ、岩手県は2018年・2019年に実施された実績があり、2018年以降でみると、全国47の都道府県の中で、高知県だけが唯一「無痛分娩を実施できていない」ことがわかります。つまり、高知県で出産する妊婦には「無痛分娩という選択肢が無い」のです。

高知県や、高知大学医学部などによりますと、高知県内では、産科医と麻酔科医が不足していて「無痛分娩」が実施できていないということです。

「全分娩数に占める、無痛分娩の割合」(日本産婦人科医会の資料より引用)

そもそも、高知県の周産期医療は厳しい状況に立たされています。2014年の出生数は「5015人」でしたが、10年後の2024年は「3233人」と減少しています。出生数の減少にともなって、分娩できる施設の数も、2014年の「15施設」から、2024年には「9施設」へと減少しています。さらに、分娩を取り扱う産婦人科医の数も、2023年当初は「43人」だったのが、2024年には「36人」に減っています。

こうした状況の中で「無痛分娩できない」ことが、「無痛分娩できる高知県外での病院での出産」などにつながり、高知県の人口減少に拍車をかけていると言われています。

この状況を打破しようと、今回、高知県と高知大学が連携協定を締結。高知県が予算面で支援して、高知大学医学部附属病院で「無痛分娩」の医療提供体制を構築していくことになりました。