鳥獣保護管理法の改正や、指定管理鳥獣への追加など、全国でクマ対策の大きな転換点を迎えています。
クマをめぐっては、特に「駆除」をめぐってさまざまな立場からの意見があり、ときには強い言葉がぶつかり合います。
私は北海道の放送局の記者として道内各地のクマ出没を取材し、ドキュメンタリー映画『劇場版 クマと民主主義』を制作しました。取材の中で、私自身が「クマの駆除」についての考え方が変わる経験をしました。
冬眠明けの春を前に、北海道での取材から感じたことをお伝えします。
偶然取材を担当した、1頭のクマ
私は北海道の放送局・HBCに2018年に入社し、報道記者になりました。
配属2か月目のある日、上司から電話がかかってきました。
「島牧村っていうところにクマが出たから、行ってくれない?」
報道記者、特に新人は、事件事故が起きるとすぐに現場に向かいます。
私は特にクマにくわしかったわけでも関心があったわけでもなく、偶然、現場に行くよう指示されました。

その村で、初めて野生のヒグマに出会ったときの画像です。
クマはこちらを見ています。目が合いました。
野生のヒグマに出会った、そう聞くと、恐怖を感じるかと思います。
しかしこのとき、私は怖くありませんでした。
クマが顔を出したのは住宅のすぐ後ろの草やぶです。前足をかけているフェンスを乗り越えれば、すぐに住宅の庭に降りられる位置です。
クマと庭をはさんでハンター数名が向かい合い、警察が並び、その後ろに私たちメディアがいました。
ハンターがクマをライトで照らします。顔のまわりに白い模様が見えました。
「ああ、あいつだ」
ハンターの声で、数日前から出没を繰り返していたクマだとわかりました。
たくさんの人に見つめられながら、クマは、落ち着いていました。
その目に、人を襲おうとする様子は感じられませんでした。
じっとこちらの様子を見つめています。
「おお降りるぞ!」ハンターが声をあげます。

クマが体を乗り出してきました。