気象台は27日昼過ぎから長崎県と鹿児島県で「顕著な海面昇降」が発生しており、舶や海上係留物への被害、海岸や河口付近の低い土地での浸水や冠水のおそれがあるとして注意を呼び掛けています。

各地で27日19時30分までに観測された海面昇降の山から谷の高さの最大値と発生時刻および周期は以下のとおりです(値は速報値)。

【長崎(長崎県)】
 発生日時:27日14時50分ごろ
 山から谷の高さ:約110センチ
 周期:約30分

【郷ノ浦(長崎県)】
 発生日時:27日18時05分ごろ
 山から谷の高さ:約80センチ
 周期:約25分

【対馬・比田勝(長崎県)】
 発生日時:27日19時00分ごろ
 山から谷の高さ:約80センチ
 周期:約15分

【枕崎(鹿児島県)】
 発生日時:27日17時25分ごろ
 山から谷の高さ:約100センチ
 周期:約15分

この海面の昇降は副振動と呼ばれ、湾内や海峡などで時々発生します。
今後も大きな海面昇降やこれに伴う強い流れが繰り返し発生する可能性があり、船舶や海上係留物等への被害のおそれがありますので注意してください。また、海岸及び河口付近の低い土地で浸水や冠水のおそれがありますので十分注意してください。

なお、各地のこれからの満潮と干潮の時刻は、以下のとおりです。

【長崎】
 ・満潮:27日18時46分/28日07時29分
 ・干潮:28日01時11分

【郷ノ浦】
 ・満潮:27日20時07分/28日08時51分
 ・干潮:28日02時22分

【対馬・比田勝】
 ・満潮:27日20時01分/28日08時32分
 ・干潮:28日02時00分

鹿児島県・枕崎
 ・満潮:28日06時38分
 ・干潮:28日00時19分

あびきとは?

「あびき」とは、海面が短時間のうちに上下する現象です。天文潮位の「主振動」に対して「副振動(あびき)」と呼ばれます。

高潮や津波とは異なり、低気圧や前線の通過による気圧の急変が原因で発生します。

春先の長崎港で多く発生する「あびき」は、東シナ海の大陸棚を前線や低気圧が通過することで、気圧が急激な変化し引き起こされると考えられています。

気圧の変化で発生した波が海底の地形などの影響を受けて増幅し、さらに長崎湾内で波が共鳴して増幅すると、湾の奥では1メートルを超す上下振動になることがあります。

長崎の「あびき」は、過去には係留していた船を流したり、道路を冠水させる被害をもたらしました。

気象台の統計によると、あびきの発生が多くなるのは2月から3月(3月は全体の約半数)となっており注意が必要です。

ちなみに「あびき」の語源は、速い流れのため魚網が流される「網引き」に由来するといわれています。