仮谷実さん
「彼が父の命日を覚えていたということと、父が好きなコーヒーとチーズケーキというのを彼は覚えている。これはちょっと本気かなと」
謝罪を「本気だ」と感じた実さんは、判決前、平田元幹部とある「約束」を交わすことにします。
仮谷実さん
「出所後、半年過ぎてから、毎月5万円ずつ(支払う)という約束。少なくとも10年間は毎月、自分の犯した罪に対して、父にわびるという場面がセッティングされるはずだと」
事件と向き合い続けてもらうため、賠償金として出所後に10年間かけて、毎月5万円を払ってもらうことにしたのです。しかし、その後に出た判決は予想よりも長い「懲役9年」。刑務所に収監される直前の手紙にも、謝罪の言葉を綴っています。
「どこに行こうとも供養の気持ちを忘れることなく、胸に刻み続けることをお約束いたします」
「今でも許すことはできない」平田元幹部と遺族の“今の関係”

2018年7月には、松本元死刑囚ら13人の死刑が執行され、事件は大きな区切りを迎えました。首謀者の松本元死刑囚は一連の事件について、何一つ、語ることはありませんでした。
その4年後の2022年、実さんのもとに、刑務所にいる平田元幹部から再び手紙が届きます。

「4月25日を以って刑期は満了となりますが、予想していた通り『罪を償った』という実感は湧いてきません。今の段階では釈放の開放感も感じられません」
出所後に平田元幹部と面会を重ねた実さんは「謝罪し続けている」と感じ、賠償額を大幅に減らすことにしたのです。
仮谷実さん
「9年、刑務所に拘束されたというのがあると。ただ、その間も謝罪の気持ちを持っている。ある意味、もう、ほぼほぼ当初の約束の10年になる。お金の問題じゃない、気持ちの問題だと」
毎月5万円と考えていた出所後の賠償額を毎月1万円とし、2年間、支払わせることで全てを終わらせることにしたのです。振り込みは欠かさず続き、先月、ついに…
仮谷実さん
「最後の2月1日。しっかり毎月。今回、ここで、約束した24回が終わったということは、彼の誠意というのが受け止められる。彼がやはり、父に対して謝罪をずっと続けてきたと」

30通近くに上る謝罪の手紙を出し、約束を果たした平田元幹部。実さんは今後、関わることはないとしたうえで、「今でも許すことはできない」と話します。
仮谷実さん
「約束を守ったとしても、彼は父の死に関わった人間なんです。だから、私たち被害者から見れば加害者であって、この関係は変わらない。許せないですよね、父が戻ってくるわけじゃないから。彼に限らず、父の死に関わった全員は許すことができない」