◆“蒸し風呂”のアパートに50匹

北九州市戸畑区にやや入り組んだ路地が走る住宅街がある。少し歩けば「大通り」の国道3号につきあたり、陸上競技場や美術館もある。夫婦は戸建てが密集するこの地区のアパートの1室に暮らしていた。

夜道をさまようダックスフント

供述によると、50匹を超えるミニチュアダックスフントが室内で“放し飼い”されていた。部屋にはレジャーシートが敷かれ、夫婦はそこに餌をばらまいていた。近所からはたびたび臭いや騒音の苦情が寄せられた。そんな近所の目を気にしてか、夫婦は散歩はさせていなかった。

「夫は日払いの給料を受け取る仕事で妻は無職。裕福ではないはずだ」先出の捜査関係者は話す。

2022年5月にはエアコンが故障した。その後は、窓を閉め切ったまま夏を過ごした。50匹を超える犬が室内でせわせわと動き回り、しかも“蒸し風呂”だというのだから、そこで生活する厳しさは想像に難くない。“限界”はほどなくして訪れた。

「捨てよう―」妻が切り出し、夫も同意した。こうして飼い主の手に負えなくなったミニチュアダックスフントたちは無責任にも外に放置されることが決まった。

夫婦は段ボールなどにダックスフントを入れ、福岡県の北部を中心に人気の無い側道や公園に次々に捨てたとされている。これまでに警察は57匹のダックスフントを保護した。