家庭に代わる生活の場を提供し児童の支援をおこなう放課後児童クラブ、いわゆる学童で去年発覚した性犯罪。再発防止の手立ては取られているのか、関係者を取材すると、学童が抱えている様々な課題が見えてきました。



子ども家庭庁によると、2021年度に全国の学童でおきた「わいせつ事案を含む虐待の件数」は0件だったのに対して、2022年度は10件。さらに2023年度は13件と増加傾向にあります。

▼NPO法人沖縄県学童・保育支援センター 小塚雄次さん
「沖縄県ではそういった事案があがったことはなくて、今回が初めて。そもそも起きてはいけないところで起きてしまったという衝撃ですね」

学童の現場を支援する活動に取り組む、NPO法人 沖縄県学童・保育支援センターの小塚雄次さん。学童での性犯罪をうけて、県は事業所への注意喚起や指導を行うよう市町村に通達しましたが、実効性は限定的だと指摘します。



▼NPO法人沖縄県学童・保育支援センター 小塚雄次さん
「実際に市町村がクラブに周知したのが事業所にどれぐらい届いてたのか、その事業所からクラブ職員にどれぐらい共有されてたのかっていうところが、いま本当に見えない状況」

学童に関しては、県と市町村で支援員の研修や配置基準のチェックなどを行っていますが、性犯罪を防ぐ対策は、それぞれの事業所に任されているのが現状です。

しかし、日々の運営に手一杯で性犯罪を予防したり、職員への啓発を行ったりしている事業所は少ないのではないかと、小塚さんは感じています。多くの事業所で「人手不足」の問題を抱えているからです。

▼NPO法人沖縄県学童・保育支援センター 小塚雄次さん
「性犯罪対策としてやはり運営者がやるべきことや、働いている職員をどう育成していくか、そういったところになかなか行き着いてないというのはあるんじゃないかなと感じます」

学童の人手不足は様々な問題の要因となっています。そのひとつが「待機児童」です。



県内における待機児童の数は2023年、過去最高の1000人を超え、高止まりの状況が続いています。

沖縄市の「やまうち学童」には、小学1年生から4年生の45人が通っています。

副施設長の佐久本さんは、できる限り子どもたちを受け入れていますが、断らざるを得ない場面も多いと言います。

▼山内学童 佐久本敦子 副施設長
「保護者はとっても切羽詰まっていて、気の毒ですよね。『もうこんなんだったら仕事は続けられない』とか言われて、私も悪いなと思うんですけど、どこかで点数をつけて、優先順位をつけていかないといけない」



学童には3つの運営区分があります。施設の手配と運営をどちらも自治体が担う「公設公営」、施設は自治体、運営は民間の「公設民営」。どちらも民間で行う「民設民営」。民設の学童は家賃などがかかるため、運営者の負担が大きくなります。全国は3割程度なのに対して、沖縄は約9割。

山内学童は「公設」の学童で比較的恵まれた運営環境ですが、それでも支援員の確保には頭を悩ませています。

▼山内学童 佐久本敦子 副施設長
「お迎えに来るときに、『求人中ですけど、どなたか知り合いいませんか?紹介してください』とお母さんたちに言っているんですけど、見つからないです」

支援員が集まらない理由の一つに、賃金の課題があります。

▼山内学童 佐久本敦子 副施設長
「ここで15年働いたらどういう賃金になるか聞かれたことがあるんですね。23~24歳の若者がこの職場に人生をかけられるのか、面接のときに聞くって、すごく自然だなと思ったんですけど、うちはあなたが頑張ればこういうふうになるよと言えなかった自分がいます」

厳しい経営状況でも運営を続けていこうと、佐久本さんが考えているのは学童の重要性を感じているからです。



▼山内学童 佐久本敦子 副施設長
「1年から4年までの子が滞在してるんですけど各年齢で関わるというのが、とってもいいなって思っています。1年生は4年生をモデルにして成長していきますし、4年生も1年生の子の面倒を見たりして、やっぱり小さい家族みたいなんですよね」

待機児童や支援員の確保、そして、子どもへの性犯罪対策など、様々な課題を抱えている学童。

子どもたちが安心して過ごせる場所を提供し続けるために、学童支援員や職員などの、待遇改善が早急に求められています。

沖縄市の「山内学童」では、事件発覚後、職員を集めて勉強会を実施したということです。虐待につながりそうな場面を想像し、職員間でディスカッションするなど、組織全体で虐待防止について話しあったそうです。

各事業所は限られた人員で対策をとる現場を支えるためにも、児童への性加害を大きな問題と捉え、職員の待遇改善や人手不足解消に向けた取り組みが欠かせません。

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