去年、妊娠を公表した上で県議選で当選を果たし、年末に産休を取得した儀保唯さん。議員と並行しながらの妊娠・出産で見えてきたのは現状の課題、そして女性の政治参加を活性化するための新たな兆しでした。
去年6月、改選後はじめての県議会に先立って行われた恒例のバッジ交付。県議会に過去最多となる8人の女性議員が加わりました。中でも少し異色だったのが弁護士でもある儀保唯さんです。
▼儀保唯 県議
「いま妊娠5か月というのもあるんですけど、子どもを持つ親だから感じることもあると思いますので、それをどう伝えて理解して頂けるか、頑張っていこうかなと思う」

出馬を決意した後で、妊娠が明らかになり、立候補をためらう気持ちもありましたが、働きながら妊娠・出産ができる、「女性が自然体でいられる社会」を体現したいと、初志貫徹し当選しました。
議員になってわずか5か月での産休取得予定。ですが、所属会派は好意的な反応だったそう。というのも…。
▼上原快佐 県議
「私事なんですけど、9月議会で育休を取らせていただきたいなと」
▼山内末子 県議
「育休1号、2号、産休1号。素晴らしいわ」
既に育休取得済と育休取得予定の2人の県議の前例がありました。

県議会6月定例会では早速、一般質問デビュー。有機農業の推進などについて論戦を交わす中、名護市安和桟橋の死亡事故に関する質問では。
▼儀保唯 県議
「名護市安和周辺の航空写真を今かざしていますが、赤い部分について歩道か車道か伺います。道路管理者としては、歩行者の安全を主眼に設計等を行っているところです」
▼他の県議
「ちゃんと答えてないよ!」「何言ってんだ!」
▼中川京貴 議長
「静粛にお願いします」
▼他の県議
「できないよ静粛に」「議長おかしいよ!」
▼儀保唯 県議
「管理者としてはっていう後が聞こえなくて。もう一回」
県の答弁に対する野党のヤジ。法廷とは違う雰囲気に面食らったといいます。
▼儀保唯 県議
「やっぱり自分が話したことに対する反応も、今回いいところもあれば、悪いところもあって。もっと突っ込んだ質問ができるようになりたいなと思います」
出産をおよそ2か月後に控えた県議会本会議。儀保さんは当初着席していますが…しばらくして退室。当時のことを支援者との会合でこうふり返っています。
▼儀保唯 県議
「私、9月議会でちょっと体調が悪くなったんですね。議会中に。ちょっとストレスもあったかもしれませんが、吐き気がして。議会中、退席したことがあります」
体を休めたのは議会棟2階にある女性用の休憩室。体調不良の職員や議員のための部屋ですが、ある不便さを感じたといいます。
▼儀保唯 県議
「議会棟ってちょっと広くて。私が休んでいる部屋の向いに男性トイレしかなくて。何度も吐いていたからいけなくて。女子トイレまで」
休憩室から女性用トイレまでは…建物の端まで歩かなければたどり着けない構造になっていました。体調が悪かった儀保さんは目の前に設置された男子トイレを利用するしかありませんでした。

ちなみに6階建ての県議会のトイレの数は、男性14に対して、女性は9。知事控室や議長室の前は男性用のみです。時には同じ県議から間接的ではあるものの、次のような言葉も。
▼儀保唯 県議
「年配の他の議員さんから「妊娠で休むことが分かっているのに、議員になるのは迷惑なんじゃないか。議会に迷惑をかけるのではないかと。(間接的に)言われたことがあります。妊娠した女性が議員になったことがないということで、話し合わなければいけない事は多いなと感じています」
県議会では産休は認められているものの、総務省の見解では本会議のリモート参加は認めていますが、採決などは認められていません。出産を控えた議員がその権限のすべてを行使できる環境が整っていないのが現状です。

一方で、儀保さんがきっかけで、県議会のあり方に変化の兆しも。
▼上原快佐 県議
「(出産後の)2月議会。まだ生後、3~4か月くらいになるので、(体調が)大丈夫であれば委員会に関してはオンラインで参加できますので。同じ委員会の人はサポートしながらやっていきましょう」
▼玉城健一郎 県議
「ぜひ使える制度は全部使ってください。誰かが使わないと使えないので」
出産後は県議会初となる、委員会へのオンライン参加を検討。また県議会に保育施設を完備しているという他県の例を参考に、県内でも取り入れたいという意見もでました。
▼会派職員 上原朱美さん
「珍しいことではなくなるといいかなと思います。これから子育てする議員にとっても。普通の職業として。特別じゃない」
去年11月、産休のための届けが初めて提出されました。それから10日後。無事、男の子を出産しました。

▼儀保唯 県議
「大変だったけど、幸せだなと感じる出産だったんですよ。だけど2月に復帰するとなると、子どもを連れていくとなると、ちょっと今厳しいかなと思っているんです。何か両立出来たらなとは考えているけれども…という感じです」
県議会議員初の出産・産休を通して見えてきた女性が政治参加する上での課題。それを問題視してクリアしていくかどうか、私たちの意識も問われます。