「ヒージャーバブル」。ここ1~2年のヤギ肉の価格高騰で、関係者を中心に聞かれるようになったこの言葉。一見、農家にとっては喜ばしいことにも思えますが手放しでは喜べない事情もあるようです。現場を取材しました。

先日開かれたヤギの初競り。この日一番のヤギ「華ヤギ」には過去最高を記録した去年をさらに10万円以上上回る39万円の値がつけられ、市場にはどよめきが広がりました。

▼久米島から初めて競りに参加・佐久本準 さん「まさか(華ヤギに)選ばれるとは思ってなかったんで、自分でもびっくりしています。今後、ヤギを飼育していくうえで非常に励みになります」

久米島から初めて競りに参加・佐久本準さん

▼南部家畜市場・野原実 場長「去年、華ヤギが史上最高の値段いってたもんで、ことしは去年よりはいかないだろうなと思っていたんですけど、それがなんと史上最高の39万円が出てしまいましてもう本当にびっくりしています今。キロ単価も去年より上がりまして、雄が1600円台、雌が1200円台、これヤギバブルと言っていいんじゃないですかね」

”市場関係者が“バブル”だと表現するヤギの価格高騰。その背景にはヤギの飼育頭数の減少があります。

コロナ禍で需要が大きく低迷したことでヤギ農家が減少。2018年には1万2000頭を超えていたヤギの飼育頭数もおととしには9500頭を下回りました。一方、コロナ禍の収束によりヤギ料理の需要が回復。

県民はもとより観光客からの需要も高まり、1キロあたり800円台まで落ち込んだ雄ヤギの取り引き価格は倍近い1600円台に。雌のヤギは実に3倍の1200円台で取り引きされました。

円安などの影響で外国産のヤギの価格が高騰したため卸業者や飲食店が県産のヤギに切り替えたことも県産ヤギの価格を押し上げる要因となっています。

南部家畜市場・野原実 場長

▼南部家畜市場・野原実 場長「農家にとっては本当にありがたいことです。でも、ヤギ料理店にとっては本当にキツい時期ですね、今」

今年創業41年を迎える南城市大里の老舗飲食店「まんぷく食堂」。「ヤギ汁」は創業以来の看板メニューです。でも実はヤギ肉の価格高騰を受け、その看板メニューの提供を一時取りやめていました。

▼まんぷく食堂・玉城安子さん「10年前くらいに比べると(ヤギ肉の仕入れ価格は)本当に倍くらいになっています。おととしくらいからやめていたんですよ、ヤギ料理を提供するの。やめていたんですけどお客さんから値段上げてでも出してほしいという声が多くて、それで1年ぶりくらいに再開したらみんなお客さん喜んでくれて」

まんぷく食堂・玉城安子さん



常連客からの要望を受けて再開したヤギ料理。ヤギ汁の価格は1200円から1800円に上がりましたが、これを目当てに店に通う人も少なくありません。

▼客「ヤギのくさい匂いとか、クセのある肉の弾力とかが好きですね。今(ヤギ汁が)1800円なんですけど、ちょっと毎日お昼食べるとなると高いとなるけどやっぱりヤギ食べると元気が出るので午後の仕事もがんばれるかなと」「ここに来たらもうこれが一番、ヤギ汁が一番です。味が、他の料理にはない味ですね。ヤギ料理のうまさがね」

▼まんぷく食堂・玉城安子さん「ステーキより高くなっているような感じなので、昔みたいに手ごろで庶民の食べ物には遠のいてるかなって思っています」