ウクライナの南部4州を強引に併合しようとするロシアのプーチン大統領。なぜこんなに性急で強引な併合を進めようとしているのでしょうか。ロシア専門家の大和大学の佐々木正明教授は、ウクライナ侵攻の予備役招集で支持率が低下したことから「強引な併合でいっきに支持率回復を狙ったのでは」と読み解きます。かつてのクリミア侵攻では支持率が急上昇した背景があるということです。

――ロシアが併合しようとしている4州では住民投票が行われ、ほとんどの住民が併合に賛成したという結果が出ました。プーチン大統領の演説の狙いは支持率アップのためということでしょうか?
「侵攻が始まって7か月で、侵攻疲れ、制裁疲れ、反プーチンというのがじわじわと国内にも広がっています。クリミア併合の時に一気に支持率が上がったんですが、国民にドネツク、ルガンスクもしくは他の2州がロシアに帰ってきたんだよ。ソ連時代の領土が戻ってきたんだよということを大々的に国内に印象づける。赤の広場でやる大きなイベントの狙いだと思います」

――クリミア併合の時にプーチン大統領の支持率が一気に上がりました。ウクライナ侵攻でも一気に支持率が上がり9月は77%ということです。プーチン大統領は計算済みということでしょうか?
「2014年2月にソチ五輪があったんですが、その当時でも支持率は上がっていないんです。この時もロシアの経済が落ちて、社会の疲弊ぶりが出てきていました。その8年後にウクライナを侵攻して支持率を上げさせた。この支持率は独立系の世論調査機関『レバダセンター』の数字ですが、この数字も正しいかどうかわかりません。むしろ反プーチンというと、おそらく密告や職を失うなどあるかもしれませんので、なかなか言いづらい。しかし、支持率は高いままです。今回予備役招集で下がってしまった。一気に上げようとしているので、わざわざイベントをしようとしているんだと思います」

国外脱出者が急増…特に多いのが『ジョージア』


――ロシアでは部分的動員が始まり、国外に脱出を図る人たちもたくさんいるということです。ロシアから向かう人が特に多いのが『ジョージア』という国で、行きやすいということでしょうか?
「旧ソ連諸国のカザフスタンとジョージア、カザフスタンの国境沿いって大きな街がないんですね。ロシア人コミュニティがジョージアにはあるんです。となると、ロシア語も通じやすいし、ルーブルも交換しやく、ロシアに近いということで、ジョージアに殺到している背景があると思います」