◆厳しい「参入障壁」の中で創意工夫
国内で新たに日本酒を製造するのは事実上、不可能だ。国税庁が清酒製造免許の新規発行を原則として認めていないからだ。消費量が減る中で参入を認めてしまうと過当競争が起き、税収の確保が難しくなってしまうというのが大きな理由だ。
輸出に特化することで免許要件を緩和する措置が去年4月に始まったものの、輸入先を確保していることなどが求められ、依然として簡単に参入できるわけではない。

こうした厳しい参入障壁にも関わらず、“酒どころ”の福岡では新しいジャンルの酒造りを模索する動きが活発だ。日本酒ではなく“その他の醸造酒”として「クラフトサケ」を打ち出すことは1つの打開策になっている。
福岡市中央区のマンションの1階にバーを併設する醸造所がある。店の入口は木がふんだんに使われている。バーカウンターを抜けてさらに奥に進むと、そこには銀に輝く円柱状の容器が何本も並んでいた。その脇でTシャツ姿の若い男性2人が立っている。柳生光人さん(29)と穴見峻平さん(29)だ。石川県や新潟県などで修行を積んだ2人が試作品の感想を出し合っている。

「うまいです」「りんごの香りもしっかり出とるね」「お米の甘みもあるし、りんごの甘みもあるしバランスがとれています」「100点です」
こちらも“ローカルファースト”だ。日本酒の製造技術をベースに、発酵過程で福岡県産のフルーツやハーブを加えた酒がまもなく誕生しようとしている。














