福岡県で日本酒をアレンジして新ジャンルの酒「クラフトサケ」として輸出を目指す取り組みが活発化している。背景にあるのは国内の厳しい参入障壁だ。

新たな日本酒は造れずとも、茶やフルーツと掛け合わせて創意工夫した“醸造酒”が次々に生まれている。茶をゆっくりと低温の日本酒で抽出した「TEA・SAKE」は、酒蔵と組んで生産量を増やそうとしている。

◆ローカルファーストxこだわりの抽出時間

「いいできだ」段ボール箱に囲まれた“試飲室”で白いメッシュの衛生帽子をかぶった男たちはうなずいた。手にしたグラスには黄金色に輝く「酒」が注がれている。福岡県の特産品・八女茶を地元の酒蔵の日本酒で抽出したという。

開発したのは”JapaneseSalon雫”のバーテンダー・高橋宏明さんだ。以前から茶を使ったオリジナルの酒づくりに取り組んでいた。このたび、商品化を目指すために八女市にある蔵元・喜多屋と星野製茶園に協力を依頼したのだ。念頭に置いたのは「ローカルファースト」だった。

高橋さん「同じ福岡県の中で生産者が一緒になってつくる。それが東京や世界に行くことが一番贅沢で一番大切です」

日本酒とお茶、それぞれのクオリティを最大限に引き出すため、抽出時間や温度、量などの緻密なデータをとりながら約1年半かけて完成させた。取材した日は、5度前後の冷蔵庫の中で300本分を造っていた。

高橋さん「飲んだときに香りだけじゃなくて味わいもしっかりと造っていきたいので、ゆっくり低温で抽出しています。あせらず、じっくり、ゆっくりと」