輸入貨物などに紛れ国内に侵入する「特定外来生物」。生態系への深刻な影響が問題ですが、愛知県豊橋市では体長わずか2.5㎜の外来アリが、驚くべき繁殖力で増え続け、住民を苦しめています。密かに住民の生活を脅かす存在と駆除に奮闘する現場を取材しました。

日常生活を脅かす特定外来生物「アルゼンチンアリ」


豊橋市下地町に住む石川知美さん(64歳)。ここ数年、家の周りに群がる生き物に頭を悩ませています。南米原産のアリ、「アルゼンチンアリ」です。

石川さんの家では駐車場の他にも玄関先や仏間など、アルゼンチンアリが家の中に侵入することもしばしばあると言います。

(アルゼンチンアリに悩む・石川知美さん)
「最初は普通の黒いアリの子どもかと思っていたが、3~4年前にチラシでアルゼンチンアリを見てこれだと思った」


ここ数年、石川さんは市販の毒餌を駐車場に撒いて対策を取っていますが駆除はできていません。

アルゼンチンアリは1993年に広島県廿日市市で初めて確認されて以降、生息域は急速に拡大。船などで運ばれて日本にやってきたと考えられていますが、近年では岐阜県など海から離れた土地でも確認されているほか、2022年4月には大阪空港の敷地内に大量に繁殖していたことが確認されました。

(国立環境研究所・五箇公一室長)
「ケーブルの熱を持っているところに(アルゼンチンアリが)集中してショートを起こしたり、一晩で家に入ってきて勝手に巣を作ることもできる」


国立環境研究所の五箇公一室長によると、生活に支障をきたしたり住民に精神的なダメージをもたらすという意味で深刻な外来種だと言います。同じ特定外来生物・ヒアリのように毒針を持つわけではありませんが、暮らしへの深刻な被害が出ます。

国立環境研究所ホームページでは世界の侵略的外来種ワースト100,日本の侵略的外来種ワースト100と記載しています。

駆除を10年続けても根絶は困難、生息域は徐々に拡大


豊橋市では2011年に三河港近くの工業地域・明海町でアルゼンチンアリを初めて確認。その6年後には町の中心部に近い下地町でも確認され、市でも対策には手を焼いています。


豊橋市環境保全課の山崎健さんは、普通のアリの駆除剤では食いつきが悪いためマーマレードに薬剤などを混ぜ合わせた市独自の駆除剤を作ったり、住民に市販の毒餌を配布したりするなどの取り組みを続けています。

(豊橋市環境保全課・山崎健さん)
「人工物と天然物の間に(アリが)いるということで(生息を)確認をしてきたが、最近は街路樹にもかなりの量がいるので、そういう所も注意している」


市では少なくとも週に1度は市職員が液体の薬剤を持ってアルゼンチンアリの目撃情報が特に多い地域を中心に見回りを行い、駆除作業も行っています。

現状では、アルゼンチンアリの調査や駆除などに対応しているのは主に環境保全課の3人。予算も限られた中、駆除作業にも限界があります。