今回、萬斎さんが演じた演目は「釣狐」約260ある演目の中で最も体力と筋力を使うといわれています。

キツネの面を被った状態のため、表情ではなく、体全体を使って表現します。

野村萬斎さん「狂言の中で大曲と言われる大きな曲でしてね。2、30分で演じ切るのが普通の狂言で軽妙な笑いが多いんですけど。キツネの真似をするもんですから激しく走り回ったりするわけですよ。酸欠にもなるし激しく動き回るので体をそのために作りあげなければいけない。しかも、85分もの間、面を被っているので苦しいんですよ。ボクサーが試合前に体絞っていくみたいな。そういうニュアンス。ストイックなものを秘めながらやっているので」

「釣狐」は、年老いたキツネの物語。キツネ狩りをする猟師を説得するため、年老いたキツネは僧侶に化け、「殺生の罪深さ」や「祟りの恐ろしさ」を伝えます。

猟師はキツネ狩りを止め、罠で使っていたキツネの好物「油揚げ」を捨てます。僧侶に化けていたキツネは、その誘惑に負けてしまい、猟師に正体がバレてしまいます。

欲望のまま行動をするのか、それとも耐え忍ぶのか。日常生活の中でも起きそうな場面をコミカルに描いているのが、狂言「釣狐」です。