
最初に稼働した装置は、水平方向の照射が可能で、これまでの2年間で前立腺がんの患者829人を治療しました。そして、2022年3月から稼働しているのが、360℃あらゆる角度から照射できる「回転ガントリー」です。

※高松未由樹 記者
「こちらの重粒子線の治療装置、このように機械そのものが回転することでさまさざまな角度から患者さんに照射することができます」

直径約2ミリの重粒子線のビームが照射され、1回の治療は、30分ほどで終わります。あらゆる角度からの照射が可能になったことで、治療の対象となる臓器が拡大。10月からは、眼球を除くほぼすべての臓器が対象となることが30日発表されました。
※山形大学医学部東日本重粒子センター 根本建二センター長
「当初予定していた全ての対象疾患に対しての治療を受け入れることをもって本格稼働と定義しています。ここを目指して18年間やってきたので、喜ばしいと思っています」

重粒子線治療は、炭素原子を光の速さの70%にまで加速させて撃ち込み、がん細胞のDNAを破壊して死滅させます。得られる効果は、X線の2倍から3倍と言われ、治療回数を減らせるのもメリットの1つです。たとえば、前立腺がんの場合、X線の38回程度に対し、重粒子線は12回と大幅に少なくなっています。

※山形大学医学部付属病院 市川真由美 医師
「あまりがん治療を受けているような感じがしないと言われるのがうれしい点。従来に比べて副作用も少なく治療効果の高い治療が受けられますので、同じ東北の治療器を活用していただければと思います」

青森県内に住む人も9月22日現在で14人が東日本重粒子センターで治療を受けました。治療できるがんが増え、世界最先端の重粒子線治療にはこれからさらに大きな役割が期待されます。

国内での重粒子線によるがんの治療の状況は
現在、山形大学医学部の東日本重粒子センターのほか、千葉県や神奈川県、兵庫県など全国7か所に施設があります。

北海道・東北では山形の1か所のみです。山形で治療の対象となる臓器は10月、拡大されます。これまでは、前立腺や頭けい部など4つでしたが、10月には眼球を除くほぼすべてに拡大されます。
がん治療の可能性が広がりますが、気になる治療費は現在、公的保険が適用されるのは、8つのがんで、年齢と年収によって異なりますが、数万円から数十万円が自己負担となります。それ以外のがんは、一律で314万円かかりますが、民間保険の「先進医療特約」に入っていれば全額を保険でまかなうことができます。


自己負担の金額は、たとえば70歳未満で年収が370万円以下の人は、ひと月あたり1万8千円から5万7600円で、このほかに診察や検査、投薬で費用がかかります。
治療の対象になるかどうかは医師が判断しますので、東日本重粒子センターは県内で治療中の方は、まずは主治医に相談してほしいとしています。山形で行われる世界最先端のがん治療の今後に注目です。