入学から5か月―担任の提案

しかし入学から5か月後の面談で、A君は担任から通級指導教室の利用をすすめられた。

担任:
「クラス全体に出した指示がA君に伝わらず、個別に指示を出す必要があります。夏休み後から週1回ペースで通級指導教室に通ってはどうでしょうか?」

担任の提案を受け、両親は「特別支援学級」への転籍を検討した。しかし壁にぶつかる。年度途中で「通常学級」から「特別支援学級」に変更することは原則できない、という制度的な制約だった。

なぜ年度途中の転籍はできないのか

長崎市教育委員会によると、小学校の学級形態には以下のような選択肢がある。

(1)通常の学級
(2)通常の学級+通級指導教室
(3)特別支援学級

特別支援学級や特別支援学校を希望する場合、前年度の9~10月頃までに申請書類を提出しなければならない。申請を受け、市は医師や臨床心理士らで構成する「教育支援委員会」で適切かどうか審議する。年度途中での変更は原則できない。

理由は、「文部科学省が定めたカリキュラムが異なるため、年度途中での変更は子どもの負担になる」。

【長崎市教育支援委員会】―長崎市教育委員会の審議機関。学識経験者、医師、公認心理士、臨床心理士、保育・福祉関係者、教員等で構成され、就学先などについて判断するが、あくまで参考意見。最終的には保護者と就学相談担当者で合意形成を図りながら決定する。