イチローが見た、松井秀喜と名門ヤンキース
イチロー:僕としてはおそらく当時から、(松井の)品の良さを感じてたんだと思うよ。だけど、みんなはやっぱ“ゴジラ”。大きいし実際、ゴジラのニックネームもあるし、やっぱホームランガンガン打つイメージだし、その人があんまり品がよくあって欲しくないなっていうね。
松井:ウフフフ(笑)。
イチロー:だからフェンスの方が壊れるイメージでいてほしいという。そんな選手は、なかなかいないからさ。それがやっぱ特別な、もう限られた人間にしかできないことだって思ってたから。だから(当時は)ちょっと品の良さを、からかったところもあると思います。
松井:残念ながら自分はね、30本止まりでしたけど(※2004年、MLBシーズン自己最多本塁打31本)、ヤンキースっていうチームの中での自分の立ち位置っていうことを、どうしても考えちゃったんですよね。それがまあ、結果的に良かったのか悪かったのか、今でもわからないですけど。
イチロー:うんうん。
松井:ホームランへの意識っていうのが、投手のタイプや試合の展開や、周りの打線との兼ね合いとかによって、それを意識するときとしないときっていうのは、自分の中でやっぱり変えちゃったんですよ。(読売)ジャイアンツにいたときは、あんまりそういうこと考えずに、基本的に全て同じアプローチだったんですけど。ヤンキース行ったときに・・・。
イチロー:いや、確かにあのチームの中ではそれを求められてね、それは考えちゃうよね。
松井:そうなんですよね。だからA.ロドリゲスがいて、J.ジアンビーがいて、B.ウィリアムスもいて、もちろん1、2番にD.ジーターとかね。この中で自分は、どこまでそれ(ホームラン)を追い求めるべきなのか。またそれをチームは望んでるのかっていう、その狭間でいつも、ちょっとね。
イチロー:なるほどね。
松井:揺れてる自分っていうのがずっといましたよね、やっぱりね。だからその辺が多分、イチローさんからしたらちょっと物足りない「松井秀喜」に映ったんじゃないかなって。
イチロー:そうか。だから、僕はマリナーズっていうチームで、自由に1番としてやらせてもらってたけど、そういう環境にないってことだ、やっぱりヤンキースだからね。「松井秀喜」が他のチームだったら、それがもう自由にね、できた可能性もあるわけで。だからやっぱり環境によって、いるチームとか、そういうなんか宿命を常に背負ってきた人だよね。
松井:自分でそうしちゃったのかもしんないですけどね。自分で何か「こういなくちゃいけない」、「こういう自分でいなくちゃいけない」っていう、いい意味でも悪い意味でも、ちょっと考えすぎちゃった部分っていうね。
イチロー:だからいろいろ染みついてるよね体に、「私」(松井の一人称)含めて。
松井:フフフフ(笑)。
イチロー:その一つだよね、性格染みついてるよね、それ。
松井:まずその自分自身を選手として高める、それはもう当たり前で、大前提として当たり前なんですけど。結局、チームの中での自分自身っていうね。
イチロー:でもそれ聞くと納得だけどね。いや、それはあの中で自由にはできないよなってね。
松井:結局なんだかんだいって、ジーターのチームなんですよあそこはね、当時は。彼がやっぱりそういうタイプの選手じゃないっていうところがやっぱり、自分の中でもね、あったかなっていう、じゃあ自分は、この中でどういうふうにやるかっていう、自然に考えちゃったんですよね、やっぱりね。














