朝と昼は “カレー”ではなく“トーストとスープ”
午後1時、自らハンドルを握って出勤する。食事は、家を出る前に軽く済ませておくという。

イチロー:朝と昼の食事は自分で用意しますよね。
記者:朝昼兼用ってなにを?
イチロー:今はトーストです。トーストとスープ。
記者:なんの?
イチロー:コーンスープ。あさくまのコーンスープ。これはね、子供の頃から飲んでるものだから、今も美味しいんだよね。
記者:朝はカレーという伝説がいまだに・・・
イチロー:本当だよね。何年経ってると思ってんの(笑)。もうあれから18年だよね、いまだに言われるもんね。いや、確かによく食べたよ。食べたけど、MAX80(食)じゃないかなと。365日の100食はいってないと思うんだよね。あれ聞く人たち365日だと思ってるんだよね。いやでもさあその方が人にとって面白いし、そうであってほしいという情報なんだろうなって思ってる。
車を走らせること30分、街のシンボルでもあるボール・パークが見えてくる。かつてセーフコフィールドと呼ばれた、シアトル・マリナーズの本拠地だ。
イチロー:おはようございます。
肩書きは「会長付特別補佐兼インストラクター」。球場には、今も自分のロッカーがある。だがその場所は、選手ともコーチとも異なっていた。

イチロー:ここは、バットボーイ、ボールボーイの子たち、彼らの場所なんですよ。上に用意してくれてるんだけど、僕その空気があんまり得意じゃなくて、コーチとかスタッフのロッカーの中にいると、なんかそっちに寄っていきそうで怖いのもあって。ここすごく良い場所なんですよ。
記者:居心地良さそう。
イチロー:めちゃくちゃいいです。
グローブやオイル、スパイクの匂い。少年時代から慣れ親しんだ空気を吸いこんで、外へ向かった。いつも一番乗りだ。
イチロー:これは運動量としては一番多いかな。1時間、長いとやってるから。どれぐらい(球が)飛んでくるかによるけどね。面白いよ。いいトレーニングになる。これはね、やっぱりグラウンドに立たせてもらってることが大きいよね。それはマリナーズに本当に感謝してる。この場所がなかったら僕だってそう続けられないもん。
そう語るイチローが、フィールドを独り占めできる時間。やがて現役選手がバッティング練習を始めると、球拾いを始めた。イチローが志願してやっていることだ。フィールドでの姿は、現役そのもの。もしも今、メジャー選手としてオファーが来たら、断らないと決めている。