「女でなければ誰が書く」永瀬清子さんを敬愛した谷川俊太郎さん
戦争中の苦い思いは、戦後、永瀬さんを「世界連邦」という平和への活動に向かわせることにもなりました。また、女性の社会進出にもその先駆者として力を尽くしました。
(谷川俊太郎さん)
「世界的な女性の詩人ですね。私からみると永瀬さんの詩というのは本当に女でなければ誰が書くという言い方をしているくらい女性であることの意識が強いんですよね」
「昼間のからだの火照りのさめぬまま女の手が万年筆を握る ちゃぶだいの祭壇で言葉は天を指す緑の茂み」
永瀬さんは、主婦として母親として農婦として暮らしながら「ちゃぶだい」という日常空間から世の中を見つめ詩を生み出したのです。谷川さんは、そのことが他の詩人にはない魅力だと語ります。
(谷川俊太郎さん)
「決して永瀬さんは自分の女性としての生活を呪ったりはしていなくてそこにまたすごく素晴らしい喜びや美しさを感じていた方なんですね。生活と自分の書く詩がちゃんと一致してそれで力強いリアリティを持っている詩人というのは残念ながら女性の永瀬さんしかいないという風に思っています」
永瀬さんがちゃぶだいに向かい詩を書いた姿を「ちゃぶだいの祭壇で言葉は天を指す緑の茂み」と表現した谷川さん。

緑の茂みとは、永瀬さんの詩そのものです。永瀬さんの詩は、今も、谷川さんの心に光を放っています。