1988年 谷川俊太郎さんが語った永瀬清子さんの魅力「非常に強い調べがある」

1988年、RSKテレビは谷川さんを取材していました。

(谷川俊太郎さん)
「私が初めて永瀬清子さんの詩を読んだ本です。『諸国の天女』(昭和15年)」。

「イトハルカナル海ノゴトク」も収められたこの詩集に谷川さんが出会ったのは、10代後半の頃だといいます。当時の印象を語る映像が残っています。

(谷川俊太郎さん)
「これは永瀬さんのやはり確か2冊目の詩集だったと思いますけど、そのときにはまだ本当に永瀬さんの詩の素晴らしさみたいなものは分からなくて、ただ他の詩人たちの詩と違って非常に強い調べがあるというのが好きでしたね。

谷川さんの書いた「永瀬清子さんのちゃぶだい」からは、永瀬さんの生き方が感じとれます。

(谷川俊太郎さんによる朗読)
「沈みかけた太陽と遠い海と隠れた権力者とさまよい続ける兵隊がちゃぶだいをかこんでいる」

谷川さんの詩には、永瀬さんが戦争中、夫を戦地へ送り出し、言論統制の中で自由な表現ができなかった悔しさも描かれています。

(生前の永瀬清子さん)
「こんなにみんなで歓呼して送り出すのは本当は間違っているんじゃないかと一人苦に思ったことがあります。どうにも仕方がなかったんですけど。情報局が来て必ず雑誌を見るわけ。表紙はこれではいけないとか、こんな言葉を使ったらいけないとかいちいち言われるんですよ。だから書く気がしなくなるんですよ」