ついにフィクションとして映像化された端島「これが観たかった」

これまでルポやドキュメンタリー作品、さらには公式HPやイベントなど、さまざまな媒体を通して端島の魅力を伝えてきた黒沢氏。あらゆるメディアを経験したうえで、より多くの人へ端島の魅力を伝えるために近年考えていたのが、まさにフィクション作品制作への挑戦だった。「これまで誰もやっていなかったから僕がやろうと思って。でも、僕にはフィクション制作の経験がなかったので、試しにプロットを書いてみたまでで終わっていました。ちょうどその頃に本作のお話をいただき、僕としてもモチーフにするだけではなく端島としてしっかり描かれるドラマが観たかったので、ぜひ協力させて欲しいとお返事しました」と、作品への思いを吐露。

しかし、当初はここまで深く緻密に描かれるとは思っていなかったという。「脚本の野木(亜紀子)さんも取材を重ねるうちに、端島の歴史の奥深さや当時の人々の様子に魅力を感じて、より厚く描きたいと思われたのかもしれませんね」と、黒沢氏自身が端島の魅力を発見したときの思いと重ねた。