三面ダムの緊急放流


村上市の三面川(みおもてがわ)上流にある三面ダム。ここで豪雨の対応に追われた人がいました。
新潟県村上地域振興局ダム管理課の本望瑞夫課長(57歳)です。

【新潟県村上地域振興局ダム管理課 本望瑞夫課長】「ここまで降ると思っていなかったので、水位が極端に上がる、流入が極端に上がるにつれて、今までに無い緊張状態で操作を行いました」


豪雨によって三面ダムの水位は午後6時以降、毎時1メートル上昇を続けました。午後8時以降も水位は下がる気配を見せず、午後9時過ぎには緊急放流開始の目安となる122メートルの貯水位を超えたのです。


【新潟県村上地域振興局ダム管理課 本望瑞夫課長】「19時前くらいに水位が急上昇したということで、緊急放流の可能性があると判断しました」

緊急放流とは、ダムに入ってきた水を貯めずに、そのまま下流へ通過させることです。貯水能力を超えるような大雨が降った時、ダムが満水になることを防ぎます。ただ、緊急放流は河川の水量が増えることから下流域に大きな影響を及ぼす可能性があります。

新潟県内では、2011年7月の新潟・福島豪雨で三条市の笠堀(かさぼり)ダムなど4つのダムで実施されましたが、三面ダムでは初めて

本望課長は警察や消防の他、JRなどの交通機関に対して緊急放流の予定を連絡。県は、場所によっては三面川の水位が25センチほど上昇すると予想し、川から離れるよう呼び掛けました。


【新潟県村上地域振興局ダム管理課 本望瑞夫課長】「流入等が読めない中、本当にやっていいのかと戸惑いがあったが、決断しました


3日午後10時5分、ついに緊急放流が実施されました。

【新潟県村上地域振興局ダム管理課 本望瑞夫課長】「これからどうなるんだろうかというか、予測が立たない状況でしたので…。ただその中でも、的確に職員と協力して判断していこうと」

放流量は最大で毎秒800トン近くまで増量。操作は常に下流の被害を最小限にするということを意識したそうです。

午後10時以降に雨が落ち着き、三面ダムへの流入量は低下。水位も午後10時半に記録した122メートル44センチから徐々に下がっていきました。放流開始からおよそ6時間後の4日午前3時50分、緊急放流は終了しました。


【新潟県村上地域振興局ダム管理課 本望瑞夫課長】「一睡もせずに朝を迎えました。もうがっくりしたというか、なんとか山を超えたなと」

本望課長は「午後10時以降にひどい雨が降っていれば、どうなるか分からなかった」として、綱渡りだった状況を振り返ります。


三面ダムが貯水能力を維持できたのは、さらに上流にある奥三面(おくみおもて)ダムの存在も大きかったそうです。
奥三面ダムは55年前の羽越水害をきっかけに建設されたもので、有効貯水量は三面ダムのおよそ3倍の1億トン以上を誇る、新潟県内最大のダムです。

奥三面ダムには、今回の豪雨で、毎秒1400トン以上の流入がありました。しかしその膨大な貯水能力で放流量を毎秒200トン未満に減らし、三面ダムへの負荷を大きく減らしていたのです。


【新潟県村上地域振興局ダム管理課 本望瑞夫課長】「(奥三面ダムが無かったら)ぞっとします。考えたくないですね。影の立役者だったと思います」


今回の経験を経て本望課長は、今後も豪雨の対応に備えたいと気を引き締めます。

【新潟県村上地域振興局ダム管理課 本望瑞夫課長】「今後もこのようなことがまたあるという意識のもと、対策を考えていきたい。職員も訓練に励んで迅速な対応が出来るように頑張っていく」


大きな被害が出た今回の記録的豪雨。
その最前線の現場には、被害を最小限に留めようと懸命に対応をした人々の姿がありました。