古い物件、焦って売るのはもったいない… 実は需要があるケースも

マンション相続税評価の見直しは、不動産価格にも一定の影響を与えそうです。不動産市場自体は依然として上昇基調にありますが、相続対策としての需要減が価格を抑える効果をもたらすかもしれない、と藤澤さんは予想しています。

マンション相続とともに注目されるのが、不動産を売買する上での権利関係を明確にする「相続登記」の義務化です。今年4月から、不動産の相続人は取得を知った日から3年以内に相続登記を行う義務が課されました。これを怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。

これまで相続登記が進まなかった背景には手続きの煩雑さのほか「土地の価値が低いと売却も難しく、登記する動機付けが低かったことや、遺産分割協議で誰が土地を引き継ぐが決まっていないケースがあったこと」を玉置さんは挙げます。

特に地方の土地や空き家は活用が難しいことから、これまで相続登記は避けられがちでした。総務省によると2023年10月時点での全国の空き家の数は、住宅全体の13.8%にあたる900万戸に上ります。人口減少や高齢化などを背景に過去最多を更新しており、深刻な社会問題といえます。

地方の実家など古い物件については「こんな古い家、すぐに処分した方がいいのでは?」という意見が家族会議などで出るかもしれません。

ただ、空き家の再生にも取り組んでいる藤澤さんは「リフォームした広い戸建てで子育てをしたい世帯や、金利が上がっている段階で家を買うまで踏み切れない人が賃貸で戸建てに住みたい、という需要は結構ある」とこれまでの経験から力説します。

藤澤さんは「時間が経つほど建物は傷み、価値が下がって負債になる」と指摘します。まずどこに誰の名義で、どんな状態で不動産があるのか整理すること。その上で「これは価値がないだろう」と主観で判断せず、不動産会社以外の様々な人にも相談して早めに手を打つのが良いということです。

「突然の相続で焦ってしまい、売ってしまうのは非常にもったいない。この法改正が、議論が進むきっかけになればと思っています」

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<取材協力>
三菱UFJ信託銀行MUFG相続研究所 主任研究員 玉置千裕[たまき・かずひろ]
株式会社ヤモリ 代表取締役 藤澤正太郎[ふじさわ・しょうたろう]

TBS NEWS DIGオリジナルコンテンツ「あかさか不動産相談所」より