「米国の同盟国である日本の失敗を強調し周辺国に害を与えると思わせる」

あるSNSの虚偽情報の投稿と拡散に関する報告書に記されていた言葉です。

みなさんがする“いいね”や“リポスト”、もしかすると誰かの策略にのせられてしまっているかもしれません。

ディープフェイクが情報戦で使われる

「ITを利用し媒介して人々を欺くもの、これも虚偽情報です」

情報セキュリティの専門機関「情報処理推進機構(IPA)」の小山明美グループリーダーは、情報セキュリティ白書2024で「虚偽を含む情報拡散の脅威と対策の動向」を注目のトピックとして特集しました。

インターネット上の虚偽情報の生成や拡散で、社会の混乱や分断、対立が、近年深刻さを増していると指摘します。

「選挙における世論誘導や中傷扇動、新型コロナ対策に関する混乱、あるいは陰謀論の広がり。ロシア・ウクライナやイスラエル・ハマス間の武力衝突といったようなものでも、サイバー情報戦、認知戦と脅威が大きな問題となっています」

代表的な例として、男性が子どもたちを瓦礫から救出する画像があります。

写っている人物たちの繋がり方などが不自然で、ディープフェイクで作られた画像だと言われているということです。

こうした画像の生成は「戦争の被害に遭うかわいそうな子どもたち」という印象を与え、相手の非道さを強調することが目的といわれます。

都合よく抽出した事実や虚偽を並べ、仮定に過ぎないストーリーを、正しいストーリーに見せる。こうした意図に基づくストーリーは「ナラティブ」と呼びます。

「情報戦」とは、虚偽情報を拡散することによって、相手の社会混乱や政府機関の信用失墜を目的とする、情報操作型のサイバー攻撃によって行われるということです。

では、どうやって戦略的に虚偽情報を拡散させるのか、小山さんは、人間の感情や心理がうまく利用されていると指摘します。