子どもの柔らかい語りから兵士の硬い語りのほか、ヒップホップのラップ表現もあるなど、さまざまな文体表現が注目を集めています。

▽トークイベントの来場者は
「彼の作品には期待しています。嬉しいです、沖縄から」
「とくに思ったのは、20代で沖縄戦だったり沖縄戦後史という長い話を書いていく人たちは多くないと思うので、頑張ってもらいたい」

作品のファンは高く評価


「彼が(作品で)書いた希望というのは大事なテーマだと思うので、僕らの世代の希望でもあるし、今後の研究も作家としての人生も含めて希望を持っています」

この小説を執筆したのは、現役の大学生。豊永浩平さん、21歳です。
今年6月、村上春樹や村上龍など数々の有名作家を輩出した講談社の文芸誌『群像』で新人文学賞を受賞しました。2000年代生まれでの受賞は初の快挙です。

『群像』で新人文学賞


▽豊永浩平さん
「そのときから卒論の計画・構想が始まっていたので、大学もあったし、バイトもきつかったですね」

豊永さんが執筆場所として案内してくれたのは、琉球大学内の図書館。卒論の参考文献探しのかたわら、執筆活動に取り組んでいます。

「自分の小説の中にも家が3つあって、その中で3世代くらいをスパンとして扱っているんですけど、そういう時は不自然にならないように実際の資料から家系図を見て学んでみることはしました」

琉球大学の図書館が執筆場所だという


史実を調べ物語に落とし込む豊永さん。今回の作品で、沖縄戦を1つのテーマとしたのはある思いがあったからです。

「例えば、本当に戦争の記憶が遠くなっていく。語れる人もいなくなっていく。その中で忘れられていく、けど忘れちゃいけないなかで、それを今の時間にまで持ってくる」

「現実で忘れられていくかもしれないという焦りと、それをちゃんと小説で今の段階にまで繋げられたら、約80年の時間に対する応答になるのではないかと思いました」