特定秘密の不適切な取り扱いやパワハラなど相次ぐ不祥事を受け、防衛省は12日、関係者218人を処分すると発表しました。陸海空の自衛隊トップらが一斉に処分される、極めて異例の事態です。
計画外の“架空の訓練”により潜水手当を水増し受給か

南波雅俊キャスター:
防衛省と自衛隊では不祥事が相次ぎ、218人が処分となりました。
▼日本の安全保障に関する情報のなかでも、特に秘匿が必要な「特定秘密」の漏えいが113人。▼潜水手当の不正受給が74人。▼自衛隊施設での不正飲食が22人。▼パワハラが3人という、合計でかなりの人数になります。
これを受け、指揮監督義務違反ということで、各組織の幹部6人も処分を受けることになりました。
特に不祥事の多かった海上自衛隊では、酒井良海上幕僚長が7月19日付で辞任することになります。また、事務次官と情報本部長、さらに統合、陸上、航空の各幕僚長を合わせた計5人も訓戒処分を受けることになりました。

まず、潜水手当の不正受給についてです。潜水手当とは、専門性や危険性を伴うため、潜った深さに応じて支給されるものです。
たとえば深度20メートルまでだと、1時間あたり310円が手当として支給されます。深くなるにつれて額も上がっていき、深度450メートルを超えると、1時間あたり1万1200円が支給されます。
この潜水手当において、海上自衛隊の複数の隊員が不正に受給をしていました。しかも、確認できている2023年3月末までの6年間で、総額は約4300万円にのぼります。懲戒免職11人など、重い処分も含めて合計74人が処分を受けました。

そもそも潜水手当とは、結構な工程を踏まなくては支給されないものです。まず、訓練計画を作らなくてはいけません。これをもとに潜水訓練を実施していきます。
さらには、記録員と呼ばれる立場の人が潜水記録をとり、それを勤務状況管理者がチェックし、艦長もダブルチェックします。その書類を給与手続きの機関へ送り、初めて潜水手当が支給されるのですが、これだけ手順を踏むものが、なぜ不正に結びついたのでしょうか。

不正の方法をみていくと、▼実施していない訓練を実績としたり、▼訓練時間を“水増し”したり、▼訓練時の最大深度を“水増し”したりしていたということです。
こうした“架空の訓練”がなぜ可能になったのかというと、計画外に訓練したように見せかけ、“水増し受給”をしていたようです。
記録員がチェックをしていたのか、ダブルチェックが上手くいっていたのかなどの詳細はわかりませんが、少なくとも、事前の計画外の訓練を行って水増しをしていたというところまではわかっています。
日比麻音子キャスター:
6年間で約4300万円の不正とのことですが、最近始まったことではないというか、常態化していたのだろうなということがみえてしまいますね。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
全体の処分でいうと数人ではなく200人を超えていて、過去最大といっても過言ではないような規模になっています。
特に問題なのは、防衛省もこれから防衛予算を増やしていこう、国民にもっと負担をお願いしますといっているなかで、お金が違う目的に使われてしまっていたことです。国民の間に不信感も募ってしまうので、よくないですね。
日比キャスター:
本当に、国民の不安や不満を煽るようなことが明らかになってしまったなと思います。