戸籍上の性別を変えるために必要とされる性器の手術。広島高裁は、手術を受けなくても男性から女性に性別を変更することを認めました。トランスジェンダー当事者たちはこの決定をどのように受け止めたのでしょうか。
外観要件は「違憲の疑いがある」広島高裁の判断

代理人 南和行 弁護士
「電話の向こうで嗚咽、泣いている感じで。『とにかく長く思っていたことなので、ほっとしました。とにかくほっとした』ということだった」
裁判を申し立てたのは、生まれた時の性別は男性で、今は女性として生活する西日本在住のトランスジェンダーでした。
戸籍上の性別を変えるには、法律で決められた5つの要件を満たす必要があります。

【特例法における性別変更の5要件】
(1)18歳以上
(2) 結婚していない
(3) 未成年の子がいない
(4) 生殖腺・生殖機能がない
(5) 変更する性別に近い性器の外観を備えている
※2人以上の医師が性同一性障害と診断している人
問題となったのは、▼生殖機能がない、▼変更後の性別に近い性器の外観を備えている、という2つの要件で、いずれも事実上、手術を求めるものとなっていました。
当事者は「手術なし」での性別の変更を申し立てていました。
これに対し、最高裁は2023年10月、「生殖不能要件」については「憲法違反で無効だ」と判断。一方、「外観要件」については結論を出さず、審理を高裁に差し戻していました。

7月10日、広島高裁は外観要件についても「違憲の疑いがある」と判断。
広島高裁の決定
「(外観要件は)過剰な制約を課すものとして、違憲の疑いがあると言わざるを得ない」
当事者がホルモン療法を受けて、体が女性と似た状態になっていることを踏まえて、戸籍上の性別変更を認めました。