当事者の受け止めは様々、戸惑いの声も

藤森祥平キャスター:
戸籍上の性別を変更するための5つの要件のうち、生殖機能をなくすことについては、2023年に最高裁で「憲法違反で無効」という判断が出されました。
一方、変更後の性別に近い性器の外観を備えているという要件については、高裁に差し戻していましたが、10日に広島高裁が、いわゆる外観要件について「違憲の疑いがあると言わざるを得ない」と指摘しました。手術なしでも外観要件は満たされるという考えを示したわけです。
今回の広島高裁の決定について、トランスジェンダー女性の土肥さんは好意的に受け止めています。

しかし、トランスジェンダーで弁護士の仲岡しゅんさんは「『戸籍を変えているんだから、当然に身体も変えている』という前提で扱われてきた当事者たちの心情を懸念する」としています。

また、「戸籍変更済みでもかえって身体の特徴を詮索されかねず、複雑な思いをしている当事者も少なくない。当事者の受け止めは様々で、戸惑いの声も聞いている」ということです。
戸籍上の性別変更「個人の責任にせず…」
小川彩佳キャスター:
当事者の中にも喜びや戸惑いなど、様々な感情があるということですし、こうした判断を受けて、当事者への風当たりが無用に強まるようなことは避けたいですね。

トラウデン直美さん:
置かれた環境や思い、悩みは様々だと思います。いかに良くしていこうかと模索している中で、逆行しない形であってほしいと思うばかりです。
当事者の間でも意見が分かれることだからこそ、こうした機会のたびにできるだけ多くの声を聞いて、どんなことができるのか集約できるように考えていくことが大事なのかなと思います。

日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
「集約」というのは重要だと思います。
裁判は個別具体的に「この人はどうか」と判断しますので、今回はおそらく、明らかに女性に見えて、体が女性化しているから「実際に違和感がない」と判断されているのだろうと思います。
当事者全員が訴訟しなければいけないとなると、お金や時間がそれぞれにかかるわけですので、法律である程度“集約”した上で、多くの人に該当する要件を作って法律で定めないと大変苦しいと感じます。
法律で“原則”を作っても、当然、例外は出ますので、例外を裁判で争うことにしないと大変ですよね。

トラウデン直美さん:
法律とともに、社会はどう変われるか模索し続けないといけないと思います。
日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
たまたまその性別で生まれた人の個人の責任という問題ではなくなっています。アレルギーも昔は即死と思われていましたが、今となっては非常に多くあるものです。個人の責任にせずに、社会全体で基準を作らなければいけません。
小川キャスター:
戸籍上の性別変更をめぐっては、公明党が先週、特例法の見直しに向けた見解を示し、秋の臨時国会での改正案の提出も視野に議論を進めていきたいとしています。
この議論の行方を見守りながら、またお伝えすることになるかと思います。
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<プロフィール>
トラウデン直美さん
慶応大学法学部卒
環境問題やSDGsについて積極的に発信
藻谷浩介さん
(株)日本総研主席研究員
著書「デフレの正体」
NYコロンビア大学ビジネススクール卒業