奥寺敬医師:
「(事件の)後に生まれた人たちばっかりになってから、これはやっぱり話さなきゃいかんなというのは思いましたね。知識の伝承が必要だろうと、あと経験の伝承ね」
そして、現在。
岐阜県の病院で日々、患者と向き合う傍ら、若い研修医の指導に力を注いでいます。
奥寺敬医師:
「血圧とかね、呼吸の数とか、未知の現象が来たところでやることは一緒なんで、そこをきちっとみようよって話をここでの研修医にもしてます。やはりそういう経験した人間がそのことを教えないとですね、下に繋がらない。自分の本分だと思っています」
事件の被害者の1人で第一通報者だった河野義行(こうの・よしゆき)さん。
事件後、河野さん宅の家宅捜索が行われると、報道が過熱。
その中で、図らずも渦中に巻き込まれることになった医師がいました。

鈴木順(すずき・じゅん)医師:
「私の医師人生を大きく変えた出来事でもあったと思います」
松本協立病院の、鈴木順医師。
当時27歳、医師3年目の研修医でした。
鈴木順医師:
「緊急で医局会議が開かれて、17名(翌日もう1人)入院したと。担当割るからって言われて、研修医3人でそれぞれ分担したんですね。それが始まりでした」
たまたま受け持った患者、その中に河野義行さんがいました。
ほどなくして、警察による河野さんへの事情聴取が始まります。
事件発生から2日後。

報道陣:
「事情聴取受けた男性の状態は?」
鈴木医師(当時):
「入院した時からまだ痙攣が続いていまして、発熱もあり、長時間話ができる状態ではありません」
病院前に詰めかけた報道陣の質問に答える、鈴木医師。
その様子が報道されると、世間の反応は想像を超えるものでした。
鈴木順医師:
「なぜ『犯人』を治療するのかとか、早く警察に出頭させろとかいうのが、もう診療の邪魔になるくらいかかってきまして」