この季節の厄介者、「蚊」に血を吸われなくなる未来がやってくるかもしれません。
6月20日、理化学研究所などの研究チームが、蚊がある成分に反応して吸血をやめることを発表しました。
約7年にわたる研究を発表した佐久間知佐子氏に詳しく聞きます。
蚊は吸う血を選んでいる!?

蚊は、ヒトやサルなどの体温や呼気(吐き出す息)などを感知して近づきます。しかし皮膚にとまったからといって全てを吸血するわけではありません。
皮膚の中に針(口吻)を出し入れし血管を探りあてて血液の味を吟味し、血を吸うかどうか決定しているのです。
血液には蚊の吸血を促進する物質「アデノシン三リン酸(ATP)」が含まれています。
蚊が血を吸い始めると、この吸血を促進するシグナルを受け取り続けることになります。
しかし蚊の立場からすると、「おいしい!」と思って長時間吸い続けていると、人間などに気づかれやすくなり、攻撃を受けるリスクが高くなります。
恵俊彰:
そうか。すばやく吸ってすばやく退散したほうが良いんだね。
理化学研究所 佐久間知佐子氏:
「アデノシン三リン酸(ATP)」が「おいしい」と思わせる物質なんですが、そのおいしさを変えるようなものが他にあると考えました。
蚊が吸血を終えるタイミングには、なにかあるのではないか。
佐久間氏らは、約7年の研究でそれを解明したのです。
蚊が“吸血をやめる”物質があった

蚊が血を吸う刺激で血液凝固が始まりますが、その過程で「フィブリノペプチドA(FPA)」という物質が作られます。
この「FPA」を蚊が体内に取り込むことによって、吸血をやめることが佐久間氏らの研究によって明らかになりました。
蚊は血液中の「FPA」の量をもとに吸血開始からのおおよその時間を測っている可能性があります。
すなわちこの仕組みがあることで、蚊はある程度時間が経てば“腹八分目”でも吸血をやめ、血を吸う相手に気付かれないようにしているというのです。
ーー「FPA」は人間の体の中にあるんですか?
理化学研究所 佐久間知佐子氏:
元々血液の中に含まれるものから、吸血が始まると作られるものです。
怪我をしたときなど、血管が傷つくと作られます。
ーー血を止めるので有名なのは血小板ですけど、それとは違うんですか?
理化学研究所 佐久間知佐子氏:
蚊は、針を刺したときに唾液も差し込みます。血液がサラサラでないと吸えませんので、血小板が集まることを防ぐ物質を入れています。
それとは別に、傷ついたときに血液が流れないようにする物質で、フィブリノーゲンというものがあり、そこからできるものです。
ーーそれがわかったとして、「吸われなくなる」ようになるんですか?
理化学研究所 佐久間知佐子氏:
FPAがあると食欲が減退する状態になりますので、この物質を無理やり蚊の中で作らせたら、吸血をやめてしまうと考えています。
ーー蚊の中で作らせる?
理化学研究所 佐久間知佐子氏:
まだ実現するかどうかわかりませんが考えている方法は二つありまして、外側から取り込ませる・食べさせる方法と、もしくは腸内細菌などを腸において、腸内細菌が常にこの物質を作るようにできればと考えています。