注目の人物にインタビューする「この人に聞く」です。

今年、秋以降公開予定の映画「郷 僕らの道しるべ」。鹿児島で生まれ育った2人の少年が、さまざまな困難に直面しながら人生の不条理や命の大切さに気づいていく物語です。アジア最大とされる上海の国際映画祭にノミネートされています。

この映画のプロデューサーを務めたのが、作品のために去年、鹿児島県の姶良市に移住した小川夏果さんです。小川さんの生き方と、鹿児島への思いを聞きました。

(小川夏果さん)「一番お気に入りの場所が重富海浜公園で、週に3回ぐらいは散歩しに行ってのんびり眺めて癒される」

映画プロデューサーの小川夏果さん、36歳。去年10月に、東京から姶良市に移住しました。今年公開が予定されている全編、鹿児島ロケの「郷 僕らの道しるべ」の製作に携わりました。

主人公が直面する人間関係の難しさや友人の死。当たり前の日常と移り変わる自然の中で、「命の尊さ」を見つめ直す物語です。

鹿児島市出身の映画監督・伊地知拓郎さんとタッグを組み、撮影に1年、編集に2年をかけ製作。小川さんは初めて長編映画のプロデューサーも務め、資金集めや、キャスティング、スケジュール調整などにあたってきました。

(小川夏果さん)「もともと女優の活動をしていたので、最初は女優さんがなぜ?と言ってくる人もいた。本当に走り回っていたというか、一人で突撃訪問。アポなしで営業をいろいろなところでして、名刺配って頭下げて、を繰り返していた」
「一瞬一瞬がすごく大切なもので宝物なんだよっていうことを伝えたい」

高校2年生の時、モデル、タレントとして活動を始めた小川さん。京都の大学を卒業し、2年間、大阪の銀行に勤めたあと、再び芸能の道へ。大手事務所に所属し、俳優として映画やテレビ、舞台などで出演してきました。

小川さんの転機は31歳だった2019年。中国・北京の映画専門の国立大学に留学した経験です。アメリカに次ぐ世界2位の映画市場を誇る大国で、自身の可能性が広がったと言います。

(小川夏果さん)「今まで芸能界でずっと女優として生きないといけないという感覚が強くて、でもそういう感覚は海外にはない。女優でも監督すればいいじゃんとか、他にもいろいろやってみればいい、なんで女優だけしかいけないの?と言ってくれる友達がいた」

帰国後、留学先の大学で出会った伊地知監督作品の作品に携わることに。作品のプロデューサーとして東京を拠点に鹿児島で活動する中、移住の決め手となったのは、地元との「壁」でした。

(小川夏果さん)「女性でプロデューサーで、ガツガツいかないといけないところに壁みたいなものがあって。出会う人に応援してくださいって言うけど、鹿児島県民じゃないんだよねって言われていた。この映画をきちんとした形で完成させるためには鹿児島県民にならないといけないっていう使命感みたいなものが出てきて」

Q.決断するときに小川さんが大切にしていることは?

(小川夏果さん)「後悔しないように生きたいという思いで決めている。中国に行ったときも誰にも相談せず自分で決めて行く。これを逃したらたぶん後悔するなというのが感覚的にあって、結局自分が選んだ道だから後悔はしない、失敗したとしても」

自分の想いに素直に歩んできた小川さん。いま、取り組んでいるのが後輩の育成です。鹿児島で俳優やモデルを育て、輩出したいと考えています。

(小川夏果さん)「福岡や大阪に行く子がたくさんいる。そういう子の話を聞くと、結局養成所で終わってしまうとか、夢を忘れてしまう子たちがたくさんいる。鹿児島の地元にいながらできることを知ってもらえればうれしい」

(記者)「鹿児島から育ててどんどん羽ばたく姿を見届けられると」

(小川夏果さん)「お母さんのように見守って巣立っていってほしい」

映画の無料上映会は7月14日の午後2時半から、薩摩川内市で行われます。今年秋以降には、映画館でも上映される予定です。