イスラエルで戦争に反対する人も

改めて、菅さんにインタビューしました。
神戸:梓さんにとって、パレスチナはどんな土地ですか?
菅さん:一言で言うのは難しいんですけど、とても素敵なところです。行った時に、パレスチナ人の人たちはみんな温かくて、いつも家に招待してくれて、「コーヒー飲んで行け」とか「泊まるとこあるのか」「泊まっておけ」とか、本当に旅人にとってとても親切にしてくれる国民性なんですね。食事一つにしてもいろんな歴史の話が詰まっていて、それをお母さんたちに教えてもらったりするのもすごく楽しい、そういう場所ですね。
神戸:イスラエル人とも、いろいろな交流があるのではないですか?
菅さん:はい、あります。イスラエルには、イスラエル国籍を持つパレスチナ人もいるので、「イスラエル人」と一言で言っても、みんなそれぞれ感じること、考えていることが違うな、というのがイスラエルに行った印象です。
神戸:実際に顔の見える人たちの地域で戦争が起きているのは、非常につらいことですね。
菅さん:つらいですね。イスラエル人の知っている人たちでも、「今のガザに対する攻撃をやめろ」と運動している人もいれば、そうじゃない人もいるし。何かをインスタグラムとかソーシャルメディアに上げたことで逮捕されるかもしれないと、何も言えない人もいるんですよね。なので、本当にみんなの心の不安定さはとても気がかりというか心配しています。

国籍や国で一概に言ってしまうのは簡単で、ネット上にありふれています。けど、そこで暮らしている一人ひとりはそれぞれですよね。簡単に差別してしまうことの無意味さも感じました。
デモの意味を考える

菅さんに、デモの意味を聞いてみました。
神戸:世界史を見れば、民衆運動がいろいろなことを動かしたことは明らかですが、日本人はその実感にちょっと欠けているかな、と僕は感じていますね。
菅さん:そうですよね。でも、日本でも昔は女性に選挙権がなかったけど、今は選挙にももちろん行けるし、立候補だってできる。そういったことも、市民が勝ち取ってきた権利です。でも権利が自分にあると、当たり前で、その権利を持っていることも忘れてしまうんですよね。特に、自分がマジョリティに属していると、「どれだけ自分が下駄を履かせてもらっているか」をなかなか実感しづらいです。少しずつみんなが想像してもらったらいいなと思います。
菅さん:今ってすごく忙しい時代で、情報も早いし考える余裕のある時間がすごく少ないので、どんどんその分想像する時間や想像力も少なくなっていってしまっているのかな、と思うんですよね。人道支援の世界で長く働いてきた人に教えてもらったのは、「人道支援の業界で、一番大切なのは想像力だ」と。「どの世界に行ってもとても大切なことだな」と感じました。
菅さん:自分の好きな情報だけを取りに行ける時代だから、こんなことが世の中で起きていることすら知らない人もやっぱり大勢いて、だからデモをやることはすごく意味のあることだと思っています。普段Xとかインスタで自分の好きなことしか調べない人がいて、私達がデモで声を上げたりすることで、その人たちが「何やってんのかな?」「虐殺を止めよう」という言葉だけ聞いたら「え?何が起きてるの」と少しでも耳に入るし、そういう意味ではデモはとても意味のあることだし、知らせる一つのチャンスだし、ツールだと思います。
想像することがとても大事だ、と。自分たちが今持っている権利は、闘って得られたもので、日本でも昔、女性は選挙権がなかった。NHK連続テレビ小説の『虎に翼』みたいな話ですよね。女性に選挙権もない、就職もできないという話を聞くと、想像の幅がすごく広がると思うのです。