話している途中でも「あ、ここでインタビューが始まるな」っていうのがわかりやすい

土井先生:ありがとう。それでね、ふみのちゃんは野球の放送をテレビで見ていたかもしれないけど、ほかにもラジオでやったり、あるいは最近はインターネットの配信もあったり、ひとつの放送局だけじゃなくてたくさん中継するところがあります。そのどの放送局も全部同じヒーローインタビューが使われます。だからひとりのインタビュアーが代表して質問しているんだよね。

―なるほど。

土井先生:だから、たくさんの放送局のためにも、「放送席」って呼びかけると「あ、ここからインタビューが始まるな」ってわかる。例えば、実況が土井で解説・向井慧さんだとしましょう。・・・いやあ、向井さん。今日のピッチャーは非常に継投がうまくいきましたよねえ。

向井おにいさん:そうですねえ。非常にいいピッチングをして・・・

土井先生:佐々木朗希投手~!

向井おにいさん:わっ、びっくりした!

土井先生:こうなっちゃうと、急に割り込んできちゃうことになるじゃない。でも「放送席」って言われたら・・・。例えばもう一回やってみましょうか。向井さん、今日は継投がすごくはまりましたね。

向井おにいさん:そうですねえ。非常にいいピッチングしてましたね・・・

土井先生:放送席、放送席~。・・・こう言われると、実況してる人も解説している人もすっと黙ってインタビューを聞かせることができる。

―なるほど。

土井先生:そして、ふみのちゃんが気になってたことがあったよね。「放送席、放送席」って、なんで2回言うのか。1回でもいいかもね。でもね、2回言ったほうが、今みたいに話している途中でも「あ、ここでインタビューが始まるな」っていうのがわかりやすい。

―はい。

土井先生:それと、今回、TBSラジオでずっとスポーツ中継の音声さんをやっていた江口さんという人にも聞いてみました。そうしたらね、1回目の「放送席~」のときからヒーローインタビューの音量をすごく高く上げておくと、インタビュアーの人がまだ自分の声は放送に出ていないと思って「これ、3分聞ける? 5分いけるかな?」って相談している声が入っちゃうかもしれない。

あるいは、マイクを握ったりする音がぐちゃぐちゃって入るかもしれない。だから音声さんは、最初はいろんな音が混ざらないようにボリュームをすごく低くしておいて、1回目の「放送席~」が聞こえたらボリュームを上げて、2回目の「放送席~」からちゃんとした音で拾えるようにするんですって。

―なるほどお。

土井先生:「放送席、放送席」って2回言うと、こういうふうにいいことがあるっていうことなの。

向井おにいさん:ふうーん! ふみのちゃんどうですか、2回言う理由はわかりました?

―わかりました!

向井おにいさん:非常にわかりやすい説明でしたね。土井さんも過去にヒーローインタビューを代表してやったことは何度もあるんですか?

土井先生:ヒーローインタビューは何度もやってますから、もしかしたらふみのちゃんが聞いていたヒーローインタビューは私がやっていたかもしれないですよ。

―ああー。

向井おにいさん:でも代表してインタビューするとなると、やっぱり責任ありますよね。

土井先生:そうなんですよ。自分たちの放送のためだけというよりは、みんなのためにヒーローインタビューをやっている。見に来ているお客さんが喜ぶように、選手が話しやすいように、放送がさらに深みが増すように、そういうふうに考えています。

―へえー! すごい大変そう。

土井先生:あははは!

向井おにいさん:そうだね(笑)。

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<回答者プロフィール>


土井敏之さん。TBSアナウンサー。オリンピック中継を見てアナウンサーを志望し、1994年にNHKに入局、1996年にTBSに移りました。サッカーや野球など主にスポーツ中継を担当し、オリンピックやサッカーのワールドカップでも実況中継しています。