延々と続いた「死の恐怖」に精神疾患を発症


袴田さんは精神疾患で会話としてのやり取りがなかなか成立しづらいそうです。先週も新聞に「事件について尋ねても『神の儀式で袴田巌は勝った』などと妄想の世界に入り、心を閉ざす。一人で何かをつぶやき、妄想の世界にいる誰かと話しているように見える時もある」という記事が出ていました。

毎日新聞(5月17日)コラム「記者の目」
袴田事件釈放10年「死刑の恐怖」続く、
非人道性=荒木涼子(エコノミスト編集部・元静岡支局)


ひで子さんは、巌さんの状況についても話をしています。

袴田ひで子さん:死刑囚になる前、未決の時にはしっかりしておりました。面会に行きまして、「巌が元気でよかったねー」と私達の方が本当に慰められておりました。

袴田ひで子さん:そういう状況でしたが、死刑囚になってからひどいショックを受けて、変なことを言うようになりましたの。「いや、そんな馬鹿言うんじゃない」とは言えないから、「ああ、そうかね、そうかね」と言って私は聞いておりましたがね。それがだんだんひどくなって、最後は面会拒否です。自分の世界に入っちゃって、妄想の世界に入って。

袴田ひで子さん:それでも私は毎月行きましたの。受付をしまして、刑務所の方が「お姉さんが面会に来たよ」と言っても、「姉はいない」とか言っておりました。でも私は「家族はまだ見捨てていないよ」というメッセージを送るために、刑務所に通っておりました。それが功を奏したかどうかわかりませんが、再審開始となりまして。本当に皆様のご支援があったればこそでございます。本当にありがとうございました。

元気に語りかける袴田ひで子さん


すごいですね。聴いていた皆さん、ひで子さんの言葉に引きこまれてしまいました。

再審請求に検察が抗告することの非情


再審請求を認めた最高裁の決定(2020年)ですが、全員が袴田さん救済の方向で結論を出しました。「再審を開かない」と考える人はゼロだったのです。
最高裁5人の中で、「東京高裁で審理をやり直す」が3人で多数意見でした。
そして「直ちに再審を開始」が少数意見ですけど、2人いました。
明らかにおかしいと裁判所も見ています。

ところが、釈放から10年も経ってしまっているのは、判決に不服であれば検察が抗告できるという制度があるからです。再審請求については検察に「抗告を禁止すべきだ」という意見も根強くあります。こうした問題が、これだけ長引かせてしまった原因になっているのかなという感じがします。