先月8日、東京都などで始まった「日本版ライドシェア」。タクシーが不足する時間帯に限って運行が認められる。
開始から1か月あまり、ライドシェアのその後はどうなっているのか?現場を取材した。
日本版ライドシェア 見えてきた課題とは?

神奈川県・三浦市。この数年、過疎化や運転手の担い手不足などで深刻なタクシー不足に陥っている。タクシー不足により、これまで定期的に集まっていた常連客の足も遠のきがちだという。
茶房スナックCABIN 辻あゆ美さん
「集まるぞって言ったときに、もう7時のタクシーがない。だからもう集まり自体ができない」

そんな中、先月三浦市が中心となって始めたのが、「かなライド@みうら」。
タクシーが不足する午後7時〜午前1時の間に運行する有償のライドシェアサービス。
利用者は、最終のバスを気にせず、友人らと飲食店で楽しめると好評だという。
地元の常連客
「(最終バスが終わった後の)1時間2時間っていう状態をみんなで共有できるっていうのが楽しみになるんじゃないかな」
ドライバーは、一般の市民。運行管理や整備管理は地元のタクシー事業者に委託している。
先月中旬からライドシェアのドライバーに登録している出口さんは、普段看護師として働く。

ライドシェアドライバー 出口彩さん
「夜間具合悪くなったとき、横須賀の病院までこの辺だと行かなきゃいけないっていう事情があるので。ちょっと助けになればなと」
「全然稼げはしないので、正直今の段階では」
「完全にボランティアですけど、それでも街のためであればと」
「かなライド@みうら」は、売り上げの半分がドライバーの給与になるが、利用者がいない場合、報酬はゼロ。
いづみタクシー 八木達也代表
「思ったより少ないっていうのが感想。1日の利用回数が2回に満たない」
1か月間での運行回数は29回。今年12月まで実証実験を行い、本格運用に向けて周知にチカラを入れている。

4月8日、こうした自治体主体のライドシェアと一線を画す形で始まったのが、「日本版ライドシェア」。運行の主体はタクシー会社で、東京・神奈川・京都など五つの地域で先行して始まった。

利用できる時間は、東京では平日の午前7時から10時台までで、週末は、深夜帯のタクシーが不足する時間に限られている。ウーバーのアプリを利用し、配車を依頼してみるが、「自家用タクシーは現在ご利用いただけません。」という表示。

その後もしばらく配車の依頼を続け、日本版ライドシェアの車に乗車し、ドライバーに話を聞くことができた。普段はイベント関係の仕事を行うAさん。

ライドシェアドライバーAさん
「スキマ時間にできたらいいなっていうと、車の運転が好きなので」
「(利用客は)基本的に98%ぐらい外国人」
ライドシェアのために清掃を行い、車内を綺麗にしているが…
ライドシェアドライバーAさん
「酔っぱらいの方が乗った時に車内で嘔吐みたいな」
「そういう方も(ライドシェアの場合)乗車拒否ができないので、この人やばいなっていう人も乗っけないといけない」
車両の清掃費など、タクシー会社からの保証はあるが、トラブルが起きた場合休業した分の補償は出ないという。
Aさんが所属するタクシー会社では時給1400円だが、売り上げの半分が時給を上回る場合、売上がそのまま報酬に。
例えば1時間で売り上げが3000円だった場合、半分にあたる1500円が時給1400円を上回るため1500円が報酬となる。

ライドシェアドライバーAさん
「(1か月の給与が)18万円ぐらいだとしたら、タイヤ・ブレーキ・オイル・ガソリン代など考えると、10万入ってくればラッキーかな」
多くのインバウンド客で賑わう京都。週末にはタクシーが約500台不足するという深刻な状況。こうした状況を解消するために、京都でもライドシェアが始まっている。

1940年創業の都タクシー。こちらのタクシー会社では、4月20日からライドシェアの運行を開始。ドライバーの募集に対し、78人の応募があり、選考の結果、31人がライドシェアのドライバーとして働く。
ライドシェアで使用する車両は、元々タクシーとして使っていたもので、社名が書いてある行燈と、運転席にあるメーターを取り除いている。
業務の前、ドライバーはタクシー会社でアルコールチェックや車両点検を行う。

ライドシェアドライバー 米田 剛さん
「もう少しお客様少ないのかなって思ったんですけど、今乗車した限りは結構忙しいですね」
「乗せてもらってありがとうみたいな言葉を言っていただけると嬉しいですね」

週末、タクシーが不足する午後4時〜翌日の午前5時の間。
米田さんの勤務時間は午後5時〜午後10時までの5時間で、社会保険料が発生しない週20時間未満と設定されている。
利用者は、事前にアプリで目的地を指定し、料金はアプリで決済。「Goで呼んできたのがライドシェアでした」「安全に走ってくれてたので、安心して乗れました」との感想。
しかしライドシェアにはこんな制約も…
ライドシェアドライバー 米田 剛さん
「多分京都駅のタクシー降りる場所で降りたかったと思うんですけど。タクシーじゃないので、タクシー乗り降り場は使えないんです」
「離れたところで降りていただく形になっちゃいます」

海外の空港などでは、ライドシェアの専用レーンが設けられているが、日本の整備はまだ追いついていない。
さらに、理解不足が原因で、プロのドライバーではないことが不安として、利用客がキャンセルするケースも。
都タクシー担当者
「タクシーとライドシェアを分からず頼んだお客さんが、ライドシェアが来たからキャンセルしたという事案が全体の2割で起こっている」
今のところ日本版ライドシェアの利用者は外国人客が圧倒的に多い状況。アメリカからの観光客は、「カリフォルニアでたくさんライドシェアを使っている」「使うのは簡単だし、手配してから早く来る」。
この日、米田さんが乗せた客は全8組。
ライドシェアドライバー 米田 剛さん
「一応時給プラス歩合という形になっているんですけど、普通のバイトにちょっと毛が生えた程度ぐらい」
「運転自体は楽しいのでいろんな方を乗せていくので、楽しみの一つではあるかな」