88人の野球部員の中で奮闘する、山口恵悟投手(2年)です。

この打者の手元で伸び上がるストレートに加え、多彩な球種を操る山口投手。“縦に割れるスライダー”も武器の一つです。
3歳の時に聴覚障がいが判明
山口投手は、3歳の時に聴覚障がいがあることが判明しました。補聴器を付けてもほとんど聞こえません。山口投手:
自分は生まれたあと3歳の時に耳が聞こえなくなった。
中学校までろう学校で過ごしましたが、山口投手にはどうしても叶えたい夢がありました。

山口投手:
甲子園に出たいから、ここの県岐阜商に入って野球がやりたいなと思いました。
“甲子園に出たい”その一心で昨年、県岐阜商業に進学。しかし、新型コロナウイルスの流行により誰もがマスクをしている世の中では、口の動きを読み取って理解する会話法、「口話」ができません。

山口投手:
自分は口話が見えなくて不安がいっぱいあったけど、友達と関わりがたくさん取れて今は不安はないです。
支えてくれたのは野球部の仲間たち。いつも親身になって、身振り、手振りを交えて助けてくれる、大切な仲間が出来ました。
クラスメートの小泉慶選手(2年):
席が隣なので先生の話を伝えるサポートをしっかりやっています。

中学からのチームメート・磯野真夢選手(2年):
聴き取れていなかったら、恵悟に大きく口を開いて、聴き取りやすくしています。
記者:
磯野くんはどういう性格ですか?
山口投手:
優しいです(照れ笑い)。
3年生の先輩たちも常に気にかけてくれました。
山口投手:
夏の大会で3年生が最後なので、3年生のみんなと一緒に甲子園に行きたいなと思います。
迎えた、岐阜県大会初戦(2回戦)の本巣松陽(7月17日・長良川球場)との試合。
部員88人の中から、山口投手は背番号18で見事ベンチ入りを勝ち取りました。
球場に駆けつけた両親は・・・。

背番号を頂けてありがたいなと思っています。
母・綾子さん:
先輩や同級生が凄く支えてくれて過ごせています。
アナウンス「9番ピッチャー山口くん」
その両親が見守るなか、甲子園につながる大事な初戦のマウンドを任されました。
唸りを上げるストレートには夢舞台を目指せる喜びがつまっています。
2回を投げ5奪三振、無安打に抑え、チームは10--0で勝利。初戦突破に貢献しました。
山口投手:
マウンドに立った時は緊張したけど、三振を取ってからそこから緊張はあまりなかったです。
勢いに乗ったチームは、3回戦の東濃実(8-7)、4回戦の岐阜総合学園(10-2)、準々決勝の美濃加茂(11-6)、準決勝の岐阜第一(8-1)に勝利し、5連勝で決勝進出。
勝てば甲子園出場が決まる大一番。帝京大可児との決勝戦(7月28日・長良川球場)は、山口投手がブルペンで出番を待つ中、延長11回、8番・村瀬海斗選手の公式戦初ホームランで県岐阜商が劇的なサヨナラ勝ちを収めました。
聴覚障がいだから・・・と諦めなかった大きな夢が、ついに実現しました。
山口投手:
甲子園に行って、耳だけではなく色んな障がいがあっても野球をやっている人たちに良いピッチングを見せたいと思います。