ウクライナ電撃訪問時も支持率アップ でも広島サミットでは…

外遊で支持率が上昇した例は過去にもあった。23年3月の調査で内閣支持率は38.3%だったが、4月調査では44.3%と6.0ポイント上昇した。このときは、3月16日に日韓首脳会談があり、63%の人がこの会談を「評価する」と答えた。さらに同月21日には岸田総理がウクライナを“電撃”訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。この際も66%の人が「評価する」と答えた。この2つの外遊が主な要因で、6ポイント上昇したとみられる。

ちなみに、23年の最大の外交イベントだった5月の広島サミット後の支持率が、(4月)47.2%→(5月)46.7%と下落したのは、マイナンバーのひも付けミスが相次いだことや、総理公邸内で忘年会を開き、親族と記念撮影をするなどした行動に批判が集まった長男・翔太郎氏の秘書官更迭によるものが大きかったと見ている。当時、閣僚経験者からは「サミットの効果が消えちゃったよ。翔太郎の問題はキツかった」などと恨み節が聞かれた。

内閣支持率アップに貢献するのは「人事」と「外遊」

外交は支持率アップに効果があるのか。2000年以降の内閣で、1か月で5ポイント以上支持率を伸ばした主な例とその主な要因をあげると以下のようになる。

【小泉内閣】
2001年11月76.7% →12月83.8%(+7.1)道路公団民営化など特殊法人改革
2002年9月58.6% →(同月20日)75.2%(+16.6)北朝鮮訪問し日朝首脳会談
【第一次安倍内閣】
2007年8月26.9% →9月42.2%(+15.3)内閣改造
【福田内閣】
2008年7月30.4% →8月35.4%(+5.0)G8洞爺湖サミット、内閣改造
【麻生内閣】
2009年3月17.7% →4月26.3%(+8.6)追加経済対策
【菅(かん)内閣】
2010年8月45.0% →9月55.5%(+10.5)内閣改造
2011年3月18.0% →4月32.1%(+14.1)東日本大震災での対応(への期待?)
【野田内閣】
2012年11月25.2% →12月31.4%(+6.2)党首討論での解散表明
【第二次安倍内閣】
2013年1月66.9% →2月76.1%(+9.2)経済対策、TPP交渉
2015年10月47.3% →11月53.7%(+6.4)内閣改造
【菅(すが)内閣】
2021年8月32.6% →9月40.8%(+8.2)総裁選不出馬を表明

辞任表明前後の月ではいわゆる“同情票”で支持率が急回復するケースはよくあるが、そういった例外を除けば、過去の政権で支持率は内閣改造など人事、外交、経済対策などで急増するケースが多くみられた。支持率低迷にあえぐ過去の政権が、人事を刷新して支持率回復を狙うという例は何度もある。

戦後歴代最長の外務大臣をつとめ「外交が得意」とされる岸田総理も、拉致問題の進展のため北朝鮮を訪問し、金正恩総書記との首脳会談に意欲を示す。2002年初めて北朝鮮を訪問し、日朝首脳会談を行った小泉純一郎元総理は訪朝前後で+16.6%と大きく支持率を伸ばしたが、あれから20年以上経過し、拉致被害者家族が高齢化する中、訪朝だけで支持率が伸びるかといえば懐疑的な見方も多い。