有名人を勝手に「復活」・・・肖像権侵害や倫理上の問題も

技術の進化によって実現した驚きのサービス。一方で問題も発生しています。

「中国のファンのみなさん こんにちは。コービー・ブライアントです」

2020年に事故で亡くなったアメリカのプロバスケットボール選手、コービー・ブライアントさん。なぜか流ちょうな中国語をしゃべっています。このように亡くなった有名人を生成AIで勝手に復活させてしまうケースが相次いでいるのです。中国国内でも、肖像権の侵害にあたるのではという指摘や、詐欺などの犯罪に利用されるのではという懸念の声が上がっています。張さんも、犯罪に利用されないよう誓約書を作ったり、場合によっては警察に通報する、肖像権の侵害にならないよう本人や家族の同意を必ずとるなどの対策をとっていると強調しました。

「AIによって永遠に死なない世界」を実現する

張さんに将来の夢を聞いてみました。

「私の夢は、普通の人がデジタルの力で『永遠に死なない』ことを実現することです」

人は肉体的に一度死ぬ。しかし本当に死を迎えるのは、その人のことを覚えている最後のひとりがこの世を去ったとき。つまり、デジタルという形でこの世に残ることができれば、人は永遠に生きられるのではないか、というのです。

「以前は皇帝のような一部の権力者だけが、巨大な墓を作ったり、歴史書に名を刻むことで、永遠に自身の痕跡をこの世に残すことができました。ある種の「不老不死」です。しかしデジタル技術によって普通の人もまた、永遠に自身の痕跡をこの世に残すことができるようになりました。私の夢は普通の人々が、「デジタルで不死」を実現できるようにすることです。それによって権力者と普通の人たちが同じように「不老不死」を手に入れることになると思います」

急速に進むAI技術がもたらすのは心の救済か、それとも死者への冒涜(ぼうとく)か。人は永遠に生きることは可能なのか?中国で始まったビジネスは、重い問いを投げかけています。

JNN北京支局長 立山芽以子