今年3月、札幌高裁は同性婚を認めない法律の規定は憲法に違反すると判断。「同性愛者に対して婚姻を許していないことは合理的な根拠を欠く差別的な扱いである」とした。
同様の集団訴訟は全国で起こされていて、2審で憲法違反と判断されたのは初めてのことだ。
札幌高裁の踏み込んだ判決を特別な思いで受け止めた男性がいる。
偏見や差別に耐えた半生 「結婚しないん?」が嫌だった

「こんな時代に生まれたかった。僕はそれが残念やなって思うわ」
大阪市西成区に住む長谷忠さん、94歳。同性愛者の長谷さんは結婚をしたことも、交際した経験もない。長年、偏見や差別を恐れて生きることを余儀なくされてきた。
かつて同性愛は“異常性欲”や“変態性欲”だと公然と語られ、日本では1990年代まで治療が可能な精神疾患とされてきた。

1929年生まれの長谷忠さんは、ゲイであることを誰にも打ち明けることもなく、好きな男性ができても告白することもできない時を過ごしてきた。
長谷忠さん
「職場の同僚から『長谷くん、結婚しないん?』ってよく聞かれたよ。それが嫌やった。自分では同性愛者であることはわかっているけど、絶対に言えなかった。30代を過ぎたら『早く結婚せえよ』って言われるようになった。そのたびに『まだちょっとなー』『ええ人を待ってるねん』とか言ってごまかしていた。自分を偽るんや」
長く同性愛者だと公言できない時代を過ごしてきた長谷さん。誰にも相談できず、異性に興味が持てない自らを異常だと責めたこともあった。
長谷忠さん
「男を好きなことを隠そうとすると嘘をつかないとあかんし、友達も作らなかった。本当にしんどかった。好きな人はおったけど、言葉には絶対出されへん。気持ちはずっと抑えたままやった」