■強いリーダーを国民が求める

2010年末からアラブ諸国に広がった民主化運動「アラブの春」で独裁政権が崩壊し、民主化の成功例と讃えられたチュニジア。
しかし、その後の経済の停滞から、反政府デモが激化。すると2021年、大統領は行政府の解体を発表。さらに7月25日、大統領の権限を大幅に強化する改憲案の国民投票を行い、賛成が9割を超えたのです。
世界各地に広がる、こうした「強権化」の流れを専門家は・・・
五野井郁夫・高千穂大学教授(民主主義論)
「昨今のコロナ禍、パンデミックというものの中で経済停滞が著しい状況になっている。何か議論をして長期的な展望を示そうという民主主義よりは、すぐにでも明日の食べ物であったりとか、そういったものを確保してくれるような、強いリーダーや強権的な政府を求める姿勢がある」
そうした状況は、長期化するウクライナでの戦争にも影響を及ぼしているのです。
■ロシアとアフリカ諸国

7月24日からアフリカ4か国を歴訪したロシアのラブロフ外相。ウクライナ問題で西側が求める制裁に抵抗している、とアフリカ諸国を称賛します。
ロシア ラブロフ外相
「ウクライナの状況は、食糧市場に悪影響を与えたが、ロシアのせいではなく、西側の明らかに不適切な対応のせいだ」(7月27日・エチオピア)
実際、アフリカ諸国の中には、国連でのロシアへの非難決議を棄権するなど、立場を明確にするのを避ける国が多くあります。背景には多くの国が、食糧などでロシアに依存していることがあります。
こうした一部のアフリカ諸国とロシアのような、強権国家同士が結びつきを強める状況が今、国際社会で起きているのです。
■強権 独裁が広がる世界

実は、現在の世界では、むしろ「民主主義」は“退潮”しているとさえ見られるデータがあります。
スウェーデンの研究機関が発表したデータによると、2011年には、世界で独裁国家に住む人口の割合が49%だったのに対し、2021年には70%にまで増えているというのです。
世界に広がりを見せる強権国家。片や、少数派になりつつある民主主義陣営。こうした状況は、今後ますます加速する可能性があると、専門家は警鐘を鳴らします。

五野井郁夫・高千穂大学教授(民主主義論)
「欧米の民主主義諸国が経済支援をする時は、民主主義を一つの指標にして援助の対象にする。しかしながら、中国やロシアという国々は、別に気にしない。そもそも中国やロシア自体が、人権というものが非常に弱い訳ですから。援助条件に非常に苦しめられたアジアやアフリカの国々からすれば、渡りに船。民主主義というのは、全く慣れていない人たちにとってただただ煩雑な過程だとしか思わない。それを定着させることがすごく難しい」
世界を覆いつつある“強権化”の流れ。私たちはそれをどう捉えたらいいのでしょうか。
(「サンデーモーニング」2022年7月31日放送より)