新型コロナの感染拡大の影響は救急医療にも広がっています。
救急車の現場での滞在時間が30分以上、かつ受け入れ照会回数が4回以上という、「救急搬送困難事案」が、7月4週目には6000件を超えました。
「119番」の受付や、救急搬送の現場では何が起こっているのか。大切な命をつなぐ救急医療を守るために、私たちができることを考えます。

■鳴りやまない「119番」受付の現場ではー

東京23区の119番通報に対応している東京消防庁の災害救急情報センターには、ひっきりなしに通報が入っています。

7月25日の取材中にもコロナ患者の搬送要請がー東京消防庁職員:
コロナ陽性者の方のお名前を教えてください。23日に新型コロナウイルス陽性と診断された方。現在38度の発熱並びにサチュレーションの低下、現在82~84・・・東京消防庁によると、7月26日の東京都内の救急車の出動率は95%を超えていました。非常用の救急車30台を追加し、合計305台で運用していますが、到着までに時間を要する場合があるということです。

コロナ陽性患者の搬送件数も、日に日に増えています。指令室の職員も、通常では日勤40人、夜勤35人のところ、増員して何とか対応している状態です。

東京消防庁はツイッターで注意喚起の映像を流しています。『救急車は、1分1秒の遅れが人の命を左右する乗り物です。しかし台数には限りがあります。あなたは、本当に救急患者ですか?』

ジャーナリスト 鎌田靖:
平常の場合だと、何かあったら119番通報するのは躊躇しないでくださいね、となっていましたが、今はそうじゃない。つまり病院に行こうかどうか悩むのと同じように、救急車を呼ぶかどうかについても、一旦ちょっと悩むというか、一度考えなければいけない、という現実があると思いますね。

■民間の搬送事業者でも救急車が“フル稼働”

搬送の現場はどのような状況なのか。
保健所や自治体病院などの依頼で新型コロナ感染者の搬送をしている、民間の搬送事業者に聞きました。民間救急フィール代表 齊藤学氏:
週を追うごとに感染の拡大がすごいスピードで進んでいて、今日(27日)も午前中だけで10件、午後も10件前後、毎日20件前後、当社だけでも搬送を行っています。 取材した日、PCR検査のため前日から発熱している80代の女性を病院へと搬送する依頼が来ました。検査の結果は陽性で、そのまま入院することに。
その10分後、新たな保健所からの依頼で、コロナ患者を自宅から病院へ搬送しました。

搬送依頼の急増を受け、コロナ対応の救急車両を増やして対応していますがー
民間救急フィール 荒瀬瑞樹氏:
夜とかは特に人手がないので(依頼を)断ったりしています。なんとか毎日毎日
(できるだけ)多い人数で回している。それでもやっぱり限界はある。 8時前から出勤して、6時間以上休憩なし。10分間休憩して5時間以上続いて、ようやくまた10分休憩。さらに夜も3時間4時間ぐらい働いて、ようやく事務所に戻って業務終了するのは日付が変わってからという日もあるとのこと。5台の救急車はフル稼働です。

本来、主に保健所から依頼をされて、コロナ患者を病院やホテルなどの療養施設に運ぶという業務ですが、最近は体調不良の方が病院に行ってPCR検査で陽性となったときに、自宅へ帰る手段として、個人で搬送を頼む方も多いそうです。

民間救急フィール代表 齊藤学氏:
救急隊からも毎日のように電話をいただいています。救急隊が医療機関に着いたときに、どうしても医療機関内に搬入ができないことがあり、1回の出動に5時間6時間救急隊が使われてしまうという事例もたくさん出ています。
消防署にある救急車を有効活用できるような取り組みとして、私達民間救急がうかがっています。

弁護士 八代英輝:
何とか救急の負担を軽減しないと、本当に重篤な、直ちに搬送しなければいけない方に手が伸びないことが心配ですよね。