2021年、山梨県内の社長の平均年齢は61歳と過去最高を更新しました。
経営者の高齢化に伴い「会社をどう引き継ぐか」が課題となっています。
今回70代から30代へ事業が引き継がれたケースとそれをサポートした支援センターの取り組みを紹介します。
山梨県笛吹市石和町にある佐野発動機工業。

代表の佐野亮平さん(31)です。

2021年10月、自動車整備工場を買い取り事業を引き継ぎました。

佐野亮平さん:
いろんな人と出会って色んな車の修理に携わることが自分の腕試しになるのではないかという気持ちがあってここがすごく魅力的に感じた。

前の事業主の保坂喜人さん(75)。

およそ40年経営を続けてきました。
保坂喜人さん:
娘が2人で跡取りもいないし誰かいないかなと常々思っていたんです。

2人はクラシックカーが縁で10年ほど前に知り合い、佐野さんが車の整備士として企業に就職してからも、度々工場に遊びに来て手伝いもしていたそうです。

そして2年前、佐野さんが「独立」を考え始めた頃、保坂さんには事業を譲りたい思いが強くなります。

しかし最初の交渉は上手くいきませんでした。

佐野さん:
やはり退職して何の収入もない、仕事の成果が何もないような状態の中で融資を受けるのが厳しいという話しになって、金額的な折り合いがつかなくて一度断念した。

そこで佐野さんは自宅で開業し、事業を続けられる収入と信用を積み上げました。

佐野さん:
1年間やった成果が数字となって現れた頃に、また保坂さんから話がありまして、『やっぱりお前買わないか』『お前やれ』という話をいただきまして、そこから僕も一気に火がついてこれはもうやるしかないと。

保坂さん:
うちのお客さんを面倒見てくれる人は他の人でなくて佐野くんに全部任せられるなと。そういうことでやっぱり佐野君がいいと。

そこから再び交渉が始まり1年かけて事業承継に至りました。

融資の面や契約書類など当初から手続きを支えたのが県事業承継・引継ぎ支援センターです。

事業を譲りたい人譲り受けたい人のマッチングやサポートにあたります。
対応するのは金融機関のOBや中小企業診断士など。相談は無料です。

もし企業価値の算定などで費用が発生した場合は県から最大50万円の補助金も出ます。

山梨県事業承継・引継ぎ支援センター 木之瀬久司 統括責任者:
金融機関の借り入れの問題などがあったがその辺りを私どもで手伝って最終的に事業譲渡の契約書を一緒に作成することで成立した。

佐野さん:
土地、建物、事業全体の売買そういうことをどうやって事務的にこなしていったらいいかというのは、やはり自動車の整備にしか携わったことがないので、全く分からない状態の中で、支援センターの方が親身になって助けていただいたので、これがなかったら事業承継上手くいかなかったという思いが今でもあります。

団塊の世代の経営者が高齢化する中、こうした事業承継が喫緊の課題となっています。
センターに寄せられる相談は年々増加していて昨年度は302件。45件が成約し、このうち22件は第三者に引き継がれました。

県事業承継・引継ぎ支援センター 木之瀬久司 統括責任者:
ここ数年のうちに事業をうまく引き継いでいかないと会社が無くなってしまう可能性がだいぶ多くなってきている。事業承継をきちんと次の世代にやっていくことは従業員にとっても、取引先や地域にとっても非常に大事なことだと思っています。

事業承継からもうすぐ1年。保坂さんの客の多くを引継ぎ忙しい毎日を送っています。
保坂さん:
やってくれてよかったなと思って。

佐野さん:
「保坂さん、保坂さん」って言って来てくれていたお客さんが、今度は「佐野さん、佐野さん」と言って来てくれるようになったのがとても嬉しくて。

何しろお客さんを大切に一生懸命頑張っていきたいと思っています。
