妻の名前も忘れ言葉を発することも…

沙代子さん「彰さん。また寝たの?」
彰さん:「うん」
沙代子さん:「声聞こえてうれしい。可愛いがいぜね。声。うんうん。2回目の声もうれしい。笑ってくれるとうれしい。いつもやってるのがこれね。あなたは彰。私は沙代?」

彰さん:「子か」
沙代子さん:「そうそう。『子』だけ言ってくれる。沙代子の名前も言えないし、忘れてるんですけどいつもパターンで子だけ言ってくれるので。今に子も言えなくなるのかなと思いつつも、でも日々繰り返しているんです」

この時はまだ、沙代子さんの質問にもわずかですが反応がありましたが、すでに愛する妻の名前もわからなくなり、言葉を発することも次第に難しくなっていました。

沙代子さん:「声だけだと分からないけど、手で触ると伝わることはあるかと思って…。笑ってもらえなくなったら本当にさみしい。いつも変顔したり色んなことして、笑ってもらえるように頑張ってます。昔からの優しさとか「うん」とかそういうものを最後まで残してくれてるのかなって思っていて、できるだけそれを続けていくことで、私は毎日を乗り切ってるんです」