生まれて初めて怒りで体が震えた

事故を起こした男は、勤務する会社の社長と酒を飲み、酔ったまま車を運転。社長を京都市内の自宅に送って、その帰りに、事故を起こしていたのです。

心誠くんの母親:
「その話を聞いた時、目の前が真っ赤になるのを感じました。生れて初めて怒りで体が震えていました。酒を飲んで運転するなんて…大切な心誠の命を奪った、大切な家族をバラバラにした飲酒運転犯を決して許さない。真実を追求し、犯人に正当な罰を与えるために闘うことを誓いました」

車を運転していたのは京都市伏見区の会社員の男(当時39歳)でした。

男は危険運転致死などの罪で起訴され、2020年5月に大津地裁で裁判が始まりました。

男は事故直後の警察の聴取に対しは、「生ビールを中ジョッキ3杯、ウイスキーのロックを3杯飲んだ」と供述していましたが、裁判では「ビールは1杯あまり、ウイスキーは1杯程度だった」と主張。当時の運転について弁護側はアルコールの影響を認めず、過失運転致死などの罪にとどまるとしたのです。

2021年11月5日の論告求刑公判。

検察側は捜査で判明した運転前の飲酒量から「酒気帯び運転にあたる基準値の2倍以上の血中アルコール濃度の状態で運転をはじめた」と指摘。目撃者の証言などから、事故までに蛇行や複数回の急停止など、異常な運転があったとして危険運転致死罪の成立を主張し、懲役6年を求刑。成立が認められないなら、過失運転致死と道路交通法違反の罪で、懲役4年を求めました。

一方、弁護側は「事故原因はアルコールの影響とは無関係な過労による居眠りの可能性を否定できない」として、量刑の軽い過失運転致死と道路交通法違反にあたると主張、執行猶予付きの判決を求めました。

心誠くんの両親は、被害者参加制度を使って裁判に出廷。被告の主張を受け入れることは

到底できないと意見を述べました。

心誠くんの母親の意見陳述:
「何度祈っても、願っても心誠は戻ってこない。時が経つほどその現実を突きつけられるばかりです。5月4日、心誠が人生の最後に書いた最後の日記には、たくさん遊んで楽しい1日だったと書いてありました。最後には、『あしたはもっと楽しくなるといいです』と締めくくられていました。心誠にあしたは来なかった。かわいい心誠。骨になってしまった。心誠を骨にしたあなたは、生きている限り何度でもやり直せます。心誠はもう戻ってこない。子どもの骨を拾う絶望、あなたにわかりますか。出生届を出した同じ窓口に、子どもの死亡届を出す父親の無念、あなたにはわかりますか?酒を飲み運転し、わずか9歳の少年の命を奪った被告に刑罰を、実刑を、危険運転致死罪を望みます」