◆「パリには行けないんですけど、、また今日をスタートに」

レース後、安藤は「本当に今日はたくさんの応援ありがとうございました。パリには行けないんですけど優勝出来て良かった」と涙ながらに語り、「諦めずに前を見て走っていたら追いつけた。7年ぶりに(自己記録を)更新できて優勝できて、また今日をスタートにして頑張りたい」と前を向いた。

この日のスタート時の気温は5℃、風速は1mと肌寒いコンディションとなったが、序盤から鈴木亜由子がペースメーカーの横に付き、最初の1㎞を3分18秒で入った。鈴木、安藤と加世田ら注目選手が先頭集団を形成し、2㎞付近まで日本記録を上回るペースとなった。

5㎞の通過タイムは16分29秒と日本記録から3秒遅れも安定したペースでの序盤。8㎞から9㎞にかけて1㎞が3分23秒とややペースが落ち、10㎞では33分05秒と日本記録から6秒遅れた。ここで鈴木がスペシャルドリンクを取れず、さらに水も獲り損ねた。だが並走していた加世田が水を取って鈴木に渡し、ライバル同士で助け合うシーンも見られた。

鈴木、加世田、安藤の3選手は先頭集団で走り、15㎞の通過タイムは49分44秒と日本記録から11秒遅れ、ここでは3人とも給水をしっかり取り、中盤の戦いに入っていった。17㎞から18㎞の1㎞は3分25秒と風向きによってはスローペースになるなど、難しいコンディションへと変化し、20㎞では1時間6分22秒と日本記録から14秒遅れに。

それでも、中間地点では1時間9分56秒と日本記録までは10秒に詰め寄りペースアップ。先頭集団は22㎞から23㎞は下り坂を利用して3分7秒のタイムとなり勝負の後半へ。

日本選手3人は先頭集団から離れず、25㎞を1時間22分40秒で通過、日本記録からは14秒遅れ。このタイミングで安藤と加世田が飛び出し、鈴木が10mほど離れ始めた。沿道から地元・愛知のファンから大きな声援を受けた鈴木は、何とか先頭集団に食らいつこうとしていたが徐々に離されていった。26㎞付近では安藤、加世田も先頭集団から離れ、2人で並走しながらトップ集団を追いかけた。

30㎞地点で安藤と加世田は1時間39分33秒と日本記録から57秒差となり、記録突破が厳しい状況に。鈴木はそこからさらに10秒遅れとなった。33㎞付近で安藤がペースを上げると加世田が遅れ始め、単独走となった安藤は35㎞を1時間56分42秒、日本記録からは1分45秒と大幅に遅れた。

トップ集団を走っていたG.ゲブレシラシエ(29、エチオピア)が36㎞付近で突然走るのをやめて棄権。これで安藤が2位、トップのC.チュンバ(30、バーレーン)に迫り、残り4㎞地点でチュンバとの差はわずか4秒。

そして、39㎞付近、残り3㎞で安藤がチェンバに並ぶとそのまま並走。互いに譲らないデッドヒートを繰り広げ、残り700mで安藤がスパートをかけ、ゴールのバンテリンドームにトップで飛び込んだ。大声援に後押しされる中、安藤は猛追するチェンバを振り切り、2時間21分18秒の自己ベストでマラソン初優勝を飾った。鈴木が2時間21分33秒で3位に入り、安藤と同じく自己ベストを更新。終盤に失速した加世田は2時間22分10秒の4位でフィニッシュした。