からふるでは今週、「つなぐ、つながる」と題して南海トラフ地震への備えを見つめなおしています。5日は、避難所不足という課題解決のための「広域避難」を考えます。別の市町村に避難する、広域避難に向けて、実際に訓練を行っている高知市下知地区の取り組みを取材しました。
最大震度7を観測した能登半島地震。自宅の倒壊などによって避難生活を余儀なくされた人は一時、2万人をこえ、発生から2か月たった3月1日時点でも、1万人以上が避難生活を送っています。(1次、1.5次、2次含む)
最大クラスの南海トラフ地震で想定されている避難者の人数は、43万8000人。数字だけでみると人口のおよそ66%です。

県内の市町村によっては想定する避難者の数が避難所の収容数を上回るといった課題があり、特に深刻なのが『高知市』です。高知市の、南海トラフ地震発生一週間後の避難者数の想定は、およそ11万2000人です。

高知市が確保している避難所は7万3000人分で、およそ4万人分が不足している計算になります。高知市で避難所が不足している背景には、津波浸水エリアが広域に及ぶことがあります。
(高知市防災対策部 大野賢信 係長)
「高知市内の指定避難所は270施設ありますが、そこに津波のハザードをかけた時に、津波の影響を受けない施設がどれくらいかというと135施設。約半数になってしまいます。一番大きな原因は津波のハザードが中心部に広くかかってしまっていることが避難所不足の原因となっています」
この課題に対し高知市は、2017年、県内の別の市町村に避難する=広域避難の協定を13市町村と結びました。
(高知市防災政策課 大野賢信 係長)
「(避難者数が)4万人なので避難所を確保していくのが難しい数字にはなりますが、ただ広域避難=市外への避難も含めて、なんとか現状を打破しようと様々な取り組みを進めていくしかない」
高知市の下知地区。市街地の東に位置し、商業施設やマンションが立ち並んでいます。

1946年の昭和南海地震で、下知地区は広く浸水しました。南海トラフ地震でも5メートルの浸水が想定されていて、浸水による復旧・復興の長期化は避けられません。

1月、高知市で行われた防災訓練には、下知地区減災連絡会のメンバーらも参加しました。津波浸水を想定した救助訓練に続いて行われたのが、「広域避難」の訓練です。減災連絡会では、南海トラフ地震発生後、仁淀川町に避難することを決めています。実際の広域避難の訓練は県内でも初めて。バスで仁淀川町に向かい、避難先に着くまでの経路や山肌の危険か所などを確認し、広域避難の避難所に指定されている集会所に1時間40分ほどかけて到着しました。

(下知地区減災連絡会 皆本隆章 会長)
「どんなに場所を構えてもらっていても、ここに至るまでの道が寸断されていたりとか、そういうことになれば避難が叶わないこともあります。こちらが用意するものとか、お互いにダブらないようにする連携も大事という話が出ていました」
(高知市防災政策課 田所佐和子 課長補佐)
「落石注意の工事も見かけましたし、凍結注意や雨量が多い場合は通行止めになるところもありましたので、そういうところを踏まえるとここだけでは難しいのではないかと感じました。避難するだけではなく生活環境も関わってくるかと思いますので、特に能登半島地震ではトイレの問題がすごく大きかったと聞いているので、そういうところも関連付けてこの訓練を行って行く必要がある」
道路状況、物資やライフラインの確保など、実際に避難をしてみて分かった課題もありました。意見交換会では「お互いの顔が見える形で今後も訓練や交流を続けていく」ことが確認されました。

(仁淀川町の住民)
「高知県の人たちですからひと事じゃない。やっぱり支えてあげたい。高知市も仁淀川町もこういう企画をやってもらって、地元の人として意見を出せるだけでも一歩大きいと思います」
(仁淀川町総務課 大平浩平 課長)
「今年の夏にここで合同の避難訓練をやる話もありましたので、その中でお互い協議・検討しながら広域避難用のマニュアルも作成できたらいいなと考えております」
(下知地区減災連絡会 皆本隆章 会長)
「平時からのつながりとして顔の見える関係性が大事なので、事が起こった時に初めて出会うのではなく、そういった連携が続けていくような平時の連携。きょうは仁淀川町から観光のパンフレットをもらったんですけれど、、県内の観光もつなげて、日ごろからこういう交流をつなげていければ、まさかそういう時に、有事の時につながるんじゃないかと強く感じました」
広域避難という選択肢に向けて動き出した地域がある一方、高知市の「避難所不足」という課題は、抜本的には解決していません。高知市は今後、広域避難ができる自治体を拡大させるために協議を進めていく方針です。