人手不足による相次ぐ減便や廃線 解決方法はあるのか!?

――人手不足による減便や廃線が問題になっている。

両備グループ代表 兼 最高経営責任者 小嶋光信氏:
過度な競争をすることによって賃金が他産業よりも100万円下がった。たくさんの時間外(労働)をやったのにも関わらず、100万円下がった。ところが、何の手も打たれなかった。そこでどうなったかというと、新規に大型2種免許を取得する人は20年前の100人に対し、10人しか取得していない。100人抜けていったら、10人しか補充がきかないということ。再雇用で定年を延ばして、何とかごまかしながらやっているが、とんをついた瞬間に雪崩を切ったように路線がなくなってくる。どういう対策をするか、社会や国がやらないといけないことが放置されている。

――民間事業として、鉄道やバス事業が成り立つ地域は首都圏ぐらいか。

両備グループ代表 兼 最高経営責任者 小嶋光信氏:
人口密集地で、マイカーを使うよりも公共交通が便利なところだけが生き残る。大都市でも、大手でもJRが言っているのは「もう山手線しか儲かりません」と。鉄道でも、他は全部赤字もしくは儲からないが、全体をネットワークとして支えている。大手私鉄も一緒。全部黒字の路線かというとそうではない。

国土交通省によると、2022年度における乗合バス事業者の赤字の割合は8割を超えている。

――手を打たないと、公共交通機関が維持できない時代か。

両備グループ代表 兼 最高経営責任者 小嶋光信氏:
パンク寸前まで来ている。これが現実。今ならまだ手を打てるが、目先の問題解決だけをしていたら、地方公共交通の8割はなくなる。地方が滅びるのと一緒。地方は消滅するといわれているが、最初に消滅するのは地方交通。

――公共交通をどうやって維持していくのか。

両備グループ代表 兼 最高経営責任者 小嶋光信氏:
3つ大事なことがある。1つは、今まで公共交通とは名ばかりですよと言っていることを直さなければいけない。今度は利用者の利益は健全な供給者があってこそという法律を作らなきければいけない。先進国と同じように、交通目的税という交通財源をしっかりと取らないといけない。しかし、それを2つやればできるのかといえばできない。乗らないバスや電車を走らせても仕方ない。国民や市民の皆さんが、公共交通を乗る社会を作って、カーボンニュートラル、市民や国民の健康、地域の発展。そういうものをやるという社会問題にしていく。「法改正」と「財源の確保」と、そして「乗って残そう」という利用者の拡大をする活性化…この3つの施策を連動させない限りは、1個1個やってみても効果が出ない。

――公共交通がなくなり、移動の権利がなくなると基本的な人権が守られないのでは。

両備グループ代表 兼 最高経営責任者 小嶋光信氏:
「国民の文化的な生活」のベースの一部に「自由な移動」、モビリティがある。人間は歩くこともできるが、近代社会の「文化的な生活」は、交通が保障されている社会というものを明示していると思った方が正しい。

――長年携わってきている、地方公共交通への思いは?

両備グループ代表 兼 最高経営責任者 小嶋光信氏:
この国を良くするためにどうしたらいいのか。我々は1事業をやっている。交通というのは全てのネットワーク。自分さえよければいいということにはならない。自分だけが助かるのではない。みんなが助からなければ自分も助からない。公共交通という小さな種の中に、地方が滅びるというものすごく大きな問題を物語っていることを理解してもらえれば嬉しい。

経営が厳しく、全国のJRローカル線、地方私鉄、バスで、路線廃止の動きが続出している。車両30両以上を保有する乗合バス事業者228のうち85.1%が赤字。また鉄道では210の事業者のうち、80.5%が赤字となっており「放っておけば8割がなくなる」という小嶋氏の発言に関する数字の裏付けでもある。

そこで小嶋氏は「公設民営」という方式を提唱している。上下分離方式と公設民営方式。どちらも事業の運営と施設資産の管理に分かれている。上下分離では第3セクターが関わるケースもあるが、公設民営では民間企業が運営。はっきりと役割を分けることが必要だと小嶋氏は話していた。

慶應義塾大学 総合政策学部教授 白井さゆり氏:
民間ができるところは、民間に任せた方が活性化しやすい。判断する人がたくさんいたら、いろんな対立もある。国がより地方のサポートをすることが大事。このままいくと若い人はどんどん大都市に行って、シニア層だけ地方に残ると、社会が機能せず、国の負担が大きくなるので、税金などを投入して、賃金もそれなりに払って公共インフラを維持するという発想が大事。国も財源が厳しく、いろいろ支払いも多いが、メリハリつけて、必要なところにはやっていく。特に公共交通は本当に国の大事なインフラ。優先した方がいい。

(BS-TBS『Bizスクエア』 3月2日放送より)