1ドル140円目前の円安。ブルームバーグは「1ドル150円まで下げた場合1997年のアジア金融危機並みの混乱を引き起こす恐れがある」と報じた。一方、消費者物価指数は7年ぶりに2%を超え、企業物価指数は過去最高を更新して9.2%、物価高が止まらない。だが日本銀行は“頑な”に政策を変えようとしない。この先にどんなシナリオが待っているのか?
■「為替水準ははっきり言って“雰囲気”と“ノリ”で決まる」
果たして円安はこのまま進んでしまうのか?専門家の見通しを聞いた。
元日本銀行理事 早川英男氏
「この先大幅な円安はないと思う。理由は2つ。今でもとんでもない円安。円ドルの長期的実力、これ購買力平価っていうが、1ドル90円くらいなんですよ。それと比べるととんでもないです。もう一つは今月末アメリカの4―6月のGDP成長率のデータが出るんですけれど、場合によってはマイナスで、2四半期連続のマイナスになる。するとアメリカはリセッション(景気下降)に入ったってことになる。するとどんどん円安ってことにはならない」
慶応義塾大学 小畑績 准教授
「150円は突破しないと思う。そもそも為替水準って絶対的水準に意味はない。為替がどう決まるかって実ははっきりしてない。購買力平価がいちばんまともな理論といわれるが、その通りになったことはあまりなくて、今は金利差で決まるというが、これは物とは無関係。金利か高いとその通貨は強いって言うんだけど、つじつまが合わない。金利が高い通貨持っていれば儲かるからみんなそっちへ流れちゃってどんどん差が開く一方で為替にならない。だからはっきり言って為替水準って“雰囲気”と“ノリ”で決まってるんですよ。専門用語でいうと“モーメンタム”なんですけど…」
小畑准教授によれば、日銀が頑ななので海外のヘッジファンドが勢いで攻めて来たため、こういう水準になっているだけで、ここまで来る間に色々なところにしわ寄せがきてるから、逆にちょっとしたきっかけで大きく戻す可能性はあるという。
では、円売りを進める海外のヘッジファンドは、どう考えているのだろうか?