実は、世界遺産のあるリゾートアイランドはいろいろあります。リゾートとしての要素は世界遺産とは直接関係ないので放送ではあまり取り上げないのですが、旅行先としては世界遺産を見ることもできるので楽しみが多いと思います。

地中海で一番美しい海

代表的なのが、スペインのイビサ島。地中海でも有数のリゾートアイランドで、年間800万人もの観光客が訪れます。昼は美しいビーチ、夜は著名DJが出演するクラブ、スペイン料理も美味と三拍子揃ってパリピに人気のイビサ島ですが、ここにも世界遺産があります。それが「イビサの生物多様性と文化」。自然遺産、文化遺産の両方で登録された複合遺産です。

海の植物ポシドニア

まず隣のフォルメンテーラ島との間の海域が自然遺産。ポシドニアという海の植物が、地中海随一の規模で生育しています。ポシドニアは海の中でも光合成を行い、二酸化炭素を吸収して酸素を出していて、「海草」と表現されます。番組「世界遺産」で水中撮影を行ったのですが、浅い海底一面に緑のポシドニアが茂り、まるで海の草原。海面にはポシドニアの種子が漂っていて、なるほど植物なのだと実感しました。イビサ島の海はとても透明で、「地中海で一番美しい」とも評されます。ポシドニアは水中にただよう砂などをキャッチして沈殿させ、美しい海の維持に一役買っているのだそうです。

古代の海洋民族・フェニキア人の集落の遺跡

一方、イビサ島の文化遺産としては古代の海洋民族・フェニキア人の遺跡があります。古代ローマが地中海の覇権を握る前は、このフェニキア人が地中海交易の主役でした。イビサ島は彼らが拠点とした場所のひとつで、集落・神殿・墓所など古いものでは2700年前の貴重な遺跡が残っています。墓所から見つかった副葬品には、アフリカから運んできたダチョウの卵の細工品などもあり、交易の民だったことを裏付けています。ちなみに古代ローマと死闘を繰り返したカルタゴは、フェニキア人が北アフリカで作った国です。カルタゴは、名将ハンニバルの指揮でアルプスを越えて現在のイタリアを攻撃するなど善戦しますが、最終的には敗れて滅び、地中海はローマ人のものとなったのです。