株式史上最高値まで50円! 相場の生き字引に聞くその先

株式相場を見続けて65年の生き字引が、兜町にいる。元日興証券株式本部長で株式評論家の植木靖男氏。当時と今の違いを聞いた。

株式評論家 植木靖男氏:
今の状況で考えると、本物。間違いない。経済的に見ても株式市場的に見ても間違いなく正当化されると思う。平成バブルの時を考えると、あの当時はもっと株高が非常に激しかったと思う。ひとことで言えば「陶酔境」。陶酔していた。買い手がどんどん広がっていく。
当時も個人から広がって、企業や農協、信用金庫といったお金が余っているところはどんどん株を買う状況になってくる。今はまだそんな状況ではない。これからおそらくそうなるだろう。

――株価はどこまで上がるのか?

株式評論家 植木靖男氏:
平成バブルを超えると、あとはもう宇宙に飛び出したような形になる。障害物はない。だから超えてすぐ天井を打つことはないだろう。おそらくひょっとしたら今回5万円にいくかもしれない。

ただ、バブル崩壊を経験している植木さん。警鐘も鳴らします。

株式評論家 植木靖男氏:
とにかく今はイケイケドンドンと太鼓叩いている。太鼓叩くのはいいが、どこかで太鼓が破れて下がる。それがどこかで必ず来る。

株価史上最高値まで50円に迫る! GDPは2期連続マイナス

――2024年の年初3万3280円から始まって5000円以上上げてきている。
ここまで急に上がった理由は?

りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 黒瀬浩一氏:
いくつかあるが、2024年に入ってから出た大きなニュースは「TSMC第2工場の2兆円の投資」。

りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 黒瀬浩一氏:
いろんな項目があるが、ある項目が出たらこれは良いニュース、そうすると次に玉突きで新しいものに波及していく。1ラウンド回ると、もう一段上のランクに上がってスパイラル的に上に上がっていくという多方面での好循環が続いている。

――日本経済が良くなるという期待感がすごく高まってるということか?

りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 黒瀬浩一氏:
言葉で言うと「日本経済の再生」というのが正しいと思う。もう1つは「企業経営の革新」この2つが相まって、全部巻き込んで大きなうねりになっている。(年明けの相場予想より上がったのは)TSMCの第2工場の2兆円というのは、アメリカの生産がうまくいかずに延期になっている。その分を日本に持ってくる可能性がある。2兆円というのは、第1工場が1兆円で巨額かつ半導体を使う生産に対する減税措置制度ができた。ここまで日本が思い切ったことをやるというのは想定外だった。

――AI半導体ブームで、ハイテク株に引っ張られた形で無理のある上昇をしてるのでは?

りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 黒瀬浩一氏:
そうだと思います。この背景はアメリカでも同じことが起きていてS&P500のうちの7銘柄「マグニフィセント7」はものすごく上がる一方で、他の493銘柄は大したことがない。生成AIで世の中が変わっていく、その期待感が日本にも波及してきた。このきっかけは、TSMCの第2工場だったと思う。

――バブル期の株高と今の株高は何が違うのかというのをまとめてもらった。1番大きいのは株価収益率?

りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 黒瀬浩一氏:
株価収益率が16倍というのは世界標準と比べて普通だということ。背景にあるのは、企業の収益力が高まったということ。ガバナンス改革の結果、ちゃんと収益が出るようになった。そして荒唐無稽な期待は入っていないという意味で実力相応と言ってよいと思う。

――今は個別にグローバルに通じる技術やビジネスモデルを持った会社がきちんと上がっているとこういうこと?

りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 黒瀬浩一氏:
バブル期は後に弾ける不動産の巨大なバブル。これが株価にも織り込まれて一体だった。後に不祥事が出たので、不良債権で長く苦しんだということもあった。現在は企業経営の革新が起きていて、これは国際的に稼ぐ体制をうまく構築できたと思う。後の不祥事など心配もないしちゃんと力がついてきているという評価でいいと思う。繰り返しになるが「経済の再生」と「企業経営の革新」それが特に商社、通信。自動車といった業種は、国際的な活動ではっきり数字が出たという理解でいいと思う。

――アメリカの株価は89年から14倍になってるのに日本はやっと1倍に戻った。日本の株価はやっぱり割安になっていた?

りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 黒瀬浩一氏:
日本でもイメージ的に株価といえばアメリカで、日本は駄目だというイメージを持っている方が多い。出遅れていた分、日本には上がる余地があると思います。

――しかしGDPは2期連続のマイナス、しかも個人消費も設備投資もマイナス。

――ただ「名目GDP」の方に焦点を当ててみると少し違う図が見えてくる。2023年の日本の名目GDPは591兆円で、2022年より5.7%も増えた。バブル期以来の「名目GDP」は高い成長率。

りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 黒瀬浩一氏:
企業収益は名目で測る。よく我々実質を重視するかのように考えがちだが、企業収益は名目だから、株価も当然名目。「名目GDP」は1990年代の後から大体500兆円から550兆円の間で横ばい。これは日本だけで、他の多くの国はみんな右肩上がり。それが上限を突破してきた。これをもって「日本経済の再生」と言っていいと思う。

――2月19日週明け以降の高値更新はあるか?

りそなアセットマネジメント チーフストラテジスト 黒瀬浩一氏:
ザラ場としては十分にあると思う。アメリカが下がったので、安寄りすると思う。安寄りしたときこそ大チャンスで、群がってくる状況。この勢いしばらくは維持できると思う。

(BS-TBS『Bizスクエア』2月17日放送より)