注目の全量戻し案に進展は見られませんでした。リニア工事の影響をめぐる静岡県の専門部会で「田代ダム案」を提案するJR東海の姿勢に対して、厳しい意見が相次ぎました。

7月20日、約3か月ぶりに開かれた静岡県の水資源の専門部会では、リニア工事で県外に流出する水の全量戻しの具体策が議題となりました。

前回の会議では、東京電力の発電用の水を大井川に還元するいわゆる「田代ダム案」を示したJR東海に対し、委員から「河川法で認められていない水利権の売買にあたるのではないか」など実現性を疑問視する声があがっていました。

しかし、JR東海は20日の会議に、この疑念に対する回答を用意しておらず、厳しく非難されました。

<静岡県 難波喬司理事>
「この案を出す時には実現性があるかどうか、工学的な実現性と法律的な実現性の両方を詰めた上で出された方がいい。その議論がされてない状態で、パンフレットで実現できるかのごとく説明されるのは不信感しかない」

田代ダム案は、JR東海が駅などに設置をはじめたパンフレットにも記載されていることから、県は流域の市町から「住民に誤解を与える」などの意見が出ているとして、JR東海の動きに苦言を呈しました。

<水資源専門部会 森下祐一部会長>
「きょう出てきた資料をみて、正直具体的に検討出来る内容ではなかったので非常にガッカリした」

JR東海の澤田執行役員は「会議で出た質問や課題に次回以降は、きちんとお答えできるようにしていきたい」と述べました。